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お久しぶりで御座います。
戻ってきてからもツイッターばかりで大変申し訳御座いません。
更新すごいひさびさになっちゃったよ… そして微妙に続きます。
そういえば動物型のロボットをアニマロイドと呼称したいのですが…
岩男周辺では「ロイド」に別な意味合いが含まれることが多そうなので、今のところ自粛をしています… ど、どうなんだろう。基礎知識が全く足りていません…
そういうわけでフレンダーです。
微妙に続きます。
【オリロボ(アレンジ?)注意】
フレンダーは、四肢を伏せた状態で、尾をゆっくりと左右に揺らしている。
そのしなやかな動き、優雅な曲線。
艶のないマットブラック。墨色のフレンダーだ。
ドクターワイリーの試作改造品であるというそのフレンダーは、カラーリングを変更されているだけでなく、元のフレンダーや、既に改造を加えられたものと比べて、一回りくらい小柄に出来ていた。体高はフラッシュマンの腰程までしかなく、騎乗することは難しいだろう。炎や水を吐く機構がないため小型化を図ったのだという。
その代わり、身体能力は格段に向上していた。
関節の滑らかさ、動作の素早さはもとより、足裏のクッションを活かして、足音を立てずに歩き回る様子は、大型犬種と言うよりも、猫型の猛獣を思わせる。
フレンダーの細い尾が時折、したりしたりと床を打った。
破壊を促す程強くはなく、かといって触れるだけの柔らかなものではない。そのしなる鞭のような美しい尾は、床が僅かに音を立てるくらいの力加減を心得て叩いているのだ。
黒い体躯も重なって、豹を彷彿とさせる優美なアニマロイドに、フラッシュマンは骨抜きにされていた。
アイセンサーの能力限界に挑むかという勢いで、フラッシュマンは目の前の対象から目を離すことなく、じっと観察を続けている。
否、これは、ただひたすら見つめているだけだ。見とれている、と言ってもいい。
瞬殺、とは傍で見ていたバブルマンの言だが、それが誇張でない証拠に、フラッシュマンのアイセンサーはきらきらと輝いて見える。
ロボットといえど、恋をするものは須く美しくなるのだ。ということではなく、常以上のデータを取り込もうと躍起になったフラッシュマンが、アイセンサーへの光量を増加させるために絞りを大きく開き、表面のゴミを最大限除去するために5パーセントほど洗浄液量を増やしている所為で、きらきらと光を良く反射するのだ。
それが黒いフレンダーに夢中であるが故の自動制御であることを考えれば、やはりロボットといえど、恋をすると美しくなるのだ、という結論に到ったとしても、ある意味では間違いではないのかも知れない。
アニマロイドの一挙手一投足を、固唾を呑んで見守る様子が美しいかどうかはともかく。
普段の皮肉屋の顔はどこへやら、憧憬の籠もる視線は、眩しいくらいだ。視線ひとつに感情を込める、そんな芸当すら見せるフラッシュマンの感情表現の細やかさは、彼のコミュニケーション能力の高さと好奇心旺盛さを良く表している。
「改造、または、それに類する変更は、許可しない」
きらきらしくフレンダーを見守る背中に、エアーマンは呆れをおくびにも出さず、淡々と声をかけた。
「基礎調教の確認、対人行動の調整、および運動機能に関するレポートは、フレンダー返還後三日以内に提出すること。行動範囲は中央塔とフラッシュマン基地のみ。他機基地を含む外出は不可」
メモ書きをはっきりと読み上げる声は平坦だ。最後に、と足しながら、エアーマンは続ける。
「試用期間は、五日間とする」
そこでようやくフラッシュマンは振り返った。機体性能を上回ったのではないか、と思わせる見事な反応速度でエアーマンを睨む。
「五日?! 一週間もねえの?!」
「これでぎりぎりだ」
「約束が違う! 俺は要求通り、セキュリティブロックの増築を三日でやっただろ!」
「だから美人を連れてきただろうが」
誠意だとエアーマンは嘯いたが、この兄機にそんな上等なものがハナから存在していないことをフラッシュマンは知っている。不信感を込めて表情の読めない青い機体を睨めば、エアーマンは大きな手で黒いフレンダーを示した。
その指先に、フレンダーは鼻先を上げて応じる。
無駄のない動き、きりりとした眼差し、計算され尽くした滑らかなフォルム。
全体的にブラッシュアップされたフレンダーの美しさは、フラッシュマンとしても確かにと頷かざるを得ない。
「いや、だからってさ…せめてあと一日二日くらい」
「駄目だ。メタルが帰ってくる」
件の暴君の名にフラッシュが押し黙った。
ふと下りる沈黙に、エアーマンは素知らぬ顔で胴体のファンをカラカラと回す。
「……待ってください。そういや、あの犬だっきらいなおにーさまに許可とかどうなすったんでしょうね」
「夢見がちなことを。許可が下りるとでも」
「無許可なの?」
「無許可ですとも」
「アッ?! 俺共犯?!」
「ははは何を今更」
足下が不意に、ぎしりぎしりと鳴る吊り橋になったような気分だ。
フラッシュマンはコアが縮こまるような具合の悪さを抱えながら、黒いフレンダーとエアーマンとを視線で往復する。夢のフレンダー。
フラッシュマンによる、月に一度のフレンダー配備申請は、長兄の独断と偏見により一刀の元に却下されるまで、がパターンとして成立しつつある。フラッシュマンとしては不本意なことではあろうが、様式美としての形を既に固めたといっても過言ではない。
だので最近は、何かと言えば「フレンダー欲しいフレンダー欲しいフレンダーフレンダーいや四ツ足なら犬じゃなくても本当はいいんだけど初志貫徹でここはフレンダーを、サンタさん織り姫様彦星様おきつねさまメフィストフェーレス神様仏様ワイリー博士とにかく誰でも良いのでフレンダーを下さい一頭でいいですこのうえなくイイコで生活してま」等々と、以下延々と続く願掛け、と言うよりはむしろ、呪詛めいた唸り声がフラッシュマンの個室から響いてくるという噂がまことしやかに流れている。
実際は口にだしたつもりはないのだが、スリープモードでも、一体どうしたら一機ばかり、長兄の目を盗んで囲えるかと無駄な試算ばかりを重ねてきた、あの、夢にまで見たフレンダーが目の前にいるのだ。
ここで飛びつかねば二度はない、とフラッシュマンは思った。
何しろ、噂ではチャンスの神様とやらは前髪しかないので、背を向けられたら捕まえようがない。
「…箝口令とか」
「クイックとヒートはメタルと一緒だ。バブルにだけ気をつけとけ」
口が滑ると言うよりも、言ったらどうなるかを理解していない二機が居ないということで、フラッシュマンは大いに勇気づけられた。意外と長兄に弱いバブルマンには、先んじて袖の下を渡しておく方が無難だろう。
しばらく考えた後に、フラッシュマンが捻り出した問いは、「博士は何て」というものだった。
それに対して、エアーマンは無言で四つに畳まれたメモを手渡す。先程読み上げていた文面の一番下に、角張ったドクターワイリーのくせ字で「説得はあてにするな」と剣呑な言葉が添えられていた。
「いいか、メタルが帰ってくる前に博士の所に戻せ」
「五日目中でいいんだな」
「止めるなら今だぞ」
「こいつがぶっ壊されないことだけ祈っててくれよ」
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