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2024/04/21

メッテイド

長兄+次兄+六男
ドキッ☆上兄だらけの作戦会議~突っ込んだら負け~

「ゆびでてのひらで」でフラッシュマンが行ってた任務の、
それに行く前の作戦会議、です。
任務内容書いてないからどこでも構わないのですけれども。




 とある企業が、極秘裏にレアメタルの新しい鉱脈を探り当てた、という情報を持ってきたのはエアーマンだった。
「ソースは?」
 どうせガセだろうという言葉を飲み込み、フラッシュマンは胡散臭げに己と同系色の次兄を眇める。
 訝るでなく飛びつくでなく、きっぱりとした問いを発したメタルマンに、エアーマンは掌を軽く上に持ち上げてみせる。彼の肩のラインがもっと明確であれば、恐らく肩をすくめていたような仕草だ。
「風の便りだ」
 表情も変えずに飄々と答えたエアーマンを一瞥し、視線は外さぬまま、メタルマンはテーブル上に積まれた紙媒体のデータを無造作に一束掴む。
 詰めるぞ、という脅しも何もないまま、いきなり紙束を腹部のプロペラに突っ込まれそうになり、エアーマンは素早く後ろに後退った。巨体の割に機敏だ、と変なことにフラッシュマンは感心する。
「上空で傍受した話だ。あの辺は回線が込み入ってるもんでな」
「ぐだぐだ喧しい。データを出せ」
 記憶回路解析されたくないなら、とえげつないことをいうメタルマンの脅しに、フラッシュマンはそりゃあプライバシーもへったくれもねえわと些かぞっとした。しかし、当のエアーマンは、まあ待てとあくまでものらくらした態度を崩す気はないようだ。
 あちらこちらをほっつき歩いては、様々な情報を入手してくるエアーマンは、大概その経路が不明か怪しいものだ。なんでもかんでも拾ってくるわけではなく、独自の判断基準に基づき、ふるいにかけた末の幾つかを提示しているのだ、とエアーマンは主張するが、その「独自の判断基準」とやらが何なのかを明確にすべしというメタルマンとは、毎度口論になる。それについてはまったくだ、とフラッシュマンは思う。
 そして、それらの情報が、ことごとくガセであればまだ無視できるものを、エアーマンの拾ってくる情報は、大当たりか大はずれのどちらか、という極端に偏ったものになっている。
 そこそこ、という結果は今のところないらしい。
 分かっていてやっているのではないかとフラッシュマンは疑っているのだが、朴訥そうに見えて、案外と食えない次兄は、なかなか腹の裡をフラッシュマンに読ませようとはしない。
「フラッシュ。傍受したデータがあれば解析出来るか?」
「…え、あー多分。見せてくれ」
 不意に話を自分に振られ、虚をつかれた形で頷く。内心慌てたが、表面には出なかったはずだ。エアーマンの方を見れば、同じく顔をフラッシュマンに向けたエアーマンは、しばし考え込むように顔を俯けた後、もういちどフラッシュマンの目を見た。

「ピーピピチチチピチュピチュ、パチュピチュピチー」

 大変可愛らしいピピの鳴き声である。
 春の野に響くに相応しい、軽やかに転がる鳥の鳴き声は、聞くものの耳を楽しませ心を癒す。
 もっとも、その発生源が目の前の厳つく青い真顔の巨体からでなければの話だが。
 案の定、全く心が癒やされなかったどころか、ささくれたフラッシュマンはもの凄い顔でエアーマンを見た。外見と中身のギャップがトキメキを産むのは昔の少女漫画までだ。雨の中で犬でも拾ってろ。
 フラッシュマンの形相が真に不快そうであることを確認して、一つ二つ、エアーマンは満足げに頷く。
 エアーマンというのは、ひとの嫌そうな顔を見るのが純粋に好きなのだ。それも地味にいらっとさせる、ぎりぎりのレベルを狙うのが好きなのだ、この次兄は。絶対にそうだ。素であるならばなぜ少し満足げなのか意味が分からない。
 フラッシュマンが、反応が今ひとつ薄い他の兄弟機に比べ、あからさまな不審を顔に浮かべるのをエアーマンは面白がっている節がある。今もメタルマンは特に何という表情も浮かべない。いや、そもそもこの長兄は表情変化が希薄ではあるのだが、恐らく今のエアーマンの寒い宴会芸に、特に何の疑問も抱いていないと思われる。
 いささか悪趣味な性癖だと苛々させられつつも、指摘したら負けだと考えて、フラッシュマンはぐっと拳を握って堪えた。
「…音声生データの解析はちょっと時間がかかりますけどォオ」
「そうだな。次からは解析用に圧縮して出せ」
「いや、つかそのピピ連れて来いよ」
「今朝」
 自基地の方で事故があってな、と小さく呟き、エアーマンは押し黙る。
 その声音からもういないのだと察し、言葉を続けるタイミングを逸したフラッシュマンは密かに動揺した。仕方のないこととはいえ己の部下を失うのは
「竜巻練習時はどうもバードストライクが多くてな」
「事故死じゃねえ! 退がらせとけ!!」
「いやメンテ中だ。一応無事」
 でもデータ吹っ飛んじゃってコレしかない。
 つかえねえ、と思わず呟いてしまい、しまったと思うより先に後頭部に衝撃を受ける。突き飛ばされるような勢いでどつかれたのだと分かったのは、既に何度もやられたことがあるからだ。
 メタルマンの恐怖政治は既に稼働後一ヶ月で電子頭脳に刷り込まれている。暴言禁止、上下関係は徹底せよ。無論、本気の本気がどこまでかは分からないが、メタルマンにとってはしつけ、だ。
 しかし、最近何となく分かってきたことだが、今の「脳天ヒビ入れる勢いの後頭部平手」は、彼にとっては「軽く小突いた」部類にはいるのだ。恐ろしいことだが。
「フラッシュ」
 躾は鉄拳と決めている、メタルマンがただ静かに名前を呼ぶのに対し、ほぼ反射的にフラッシュマンはサァセン! と叫んだ。
「エアーお兄様マジ不備やめてくださいません! 無能すぎますわよ!」
「おいメタル、敬語なら暴言可なのか」
「確かに”使えねー”ではあるからな。許す」
「横暴すぎませんこと」
「お前には許してない」


突っ込むところはそこじゃねえ、という。
気付いてもそこにはあえて触れないのがエアーのスルースキル。

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2009/05/07 小説 Trackback() Comment(0)

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