[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
- Newer : 今日もヘタレは元気です
- Older : 肩とか肘とか指とか
しばらく別ジャンル原稿の為落ちます。落ちるの。落ちるんだから。原稿するのよ (言い聞かせ)
取り敢えず海賊+手品
海賊は攻めだと思うし手品は受けだと思うのですが
二人を並べるとどうにも百合っぽくなります。なぜかしらー
基本的にはマジックは要領いいと思うんです…
けど、キングのお願いとかは断れないといいなーって。
キング本拠地にある作戦会議室、という名の一室は、本来の仕事を果たしたことがついぞない。
キングナンバーズの面々の作戦任務といえば、それぞれ専門の任務に就くことが主である――というよりは、単純に彼らは団体行動や連携プレーがものの見事に苦手な連中ばかりであるからだった。
予定通りに事を運ぼうとする仕事に対する自覚だとか緊張感だとか、仲間のサポートに回って強力をし合う、といった意識が悉く欠如しているのであれば、それも当然といえる。
作戦を立てたところで、作戦通りに機能しないのであれば、作戦会議をする必要はないということだ。故に、元々はきちんと作戦会議室なりの様相を称えていた一室であるが、現在ではさくせんかいぎしつとは名ばかりの談話室である。
置き場所のなくなった、あまり価値のない酒類を棚ごと持ち込んだのはパイレーツマンだが、最初にソファを入れたのはキング本人であるので、恐らくキングも諦観の域であることが知れた。
今日も今日とて、良い具合に略奪の限りを尽くして大満足で帰還したパイレーツマンは、作戦会議室(あくまでも)でひとり祝杯と洒落込んでいた。自室でお宝を眺めながら飲むのも良いが、今日は誰かしらに絡みたい気分だったのである。
とはいえ、誰も居なければそれはそれで乙なものだ。
パイレーツマンがソファに沈み込んで黙々とアルコール系エネルギー摂取に努めていると、がつん、と乱暴に扉を開ける音がした。こういう開け方はバーナーマンか、振り返ったパイレーツマンが見たのは、一目で不機嫌と分かる面で部屋に入ってきたマジックマンの姿だった。
確か、テングマンとグランドマンと三機編成で中東の兵器工場を潰しに行った、というような話を昨日キングに聞いた気がする。
相手に合わせたりサポートしたりといった文化のないキングナンバーズ内で、それでも合同任務をこなすことはままある。その際、一度の活動は多くて三機までに限られた。
というのも、それぞれ職人気質のナンバーズは、己のスタイルと専門分野に固執するものばかりのため、自分配分でのみ活動したがり、場合によっては一人の方が良かっただの邪魔をするな等といった愚にもつかない喧嘩を始め、敵機殲滅のちに下らない内部闘争に到ることがあるからだ。
そのため組み合わせは重要で、たとえばコールドマンとグランドマンを一緒に出してもサポートなど望めないし、バーナーマンとアストロマンではアストロマンが暴走ガスボンベを御しきれない。
常識人と思われがちなテングマンは、大所帯からの解放感なのか、上の締め付けが厳しかった反動なのかは知らないが、己の戦闘に熱中すると他が見えなくなる節があるし、パイレーツマンはパイレーツマンで金銭宝物が少しでもチラつくと優先順位を勝手に書き換える傾向がある。
そうなると消去法で残るのが、ダイナモマンとマジックマンだが、皮肉と愚痴が多いものの、意外にも理性的なダイナモマンは、舵取りに向いていた。
問答無用で黙らせる強硬手段も辞さない(その場合は本当にダウンさせてしまう恐れがあるが)ため、作戦無視傾向の強い機体との相性は抜群である。ただし、付き合い嫌いゆえか、罵詈雑言のバリエーションが豊かすぎるので不必要なトラブルを起こすこともままあった。
そういうわけで、結果的にババを引きまくっているのがマジックマンである。
キングナンバーズで唯一と言っていい、正常なコミュニケーション能力を誇るマジックマンは、誰とでも組ませられるうえ、見た目より遙かに武闘派で、相手がたとえ己の苦手とする刃物を持っているテングマンであっても、引かずに臨戦態勢をとる姿勢からも、流される心配はない。そのため、複数機出動任務では非常に重宝がられていた。
率先しろと言われると凡将の向きもあるが、暴走列車の方向修正や、やる気のないひきこもりに目的を与えたりの細かい調整が上手いのである。
そうは言っても、彼はもともと面倒見の良い性質ではない。
キングから直々に、たっての頼みといわれれば断るべくもないが、ストレスは非常に溜まるものであるようだ。
「随分とご機嫌じゃねえか」
手にしていたファイルを壁に叩きつけ、なにやら聞き取れぬ低い声で呪詛を呟くマジックマンに声をかけると、視線だけで刺し殺せるとでもいう強さで睨み付けられた。アイセンサーの色が普段の綺麗なグリーンではなく、どよりと濁った黄色をしている。
派手な破損は見あたらないが、常にこぎれいにしているマジックマンにしては、あちこちがぼろぼろだ。自慢のシルクハットは縁が毛羽立って変な方に折れているし、装甲もあちこちが煤けたり欠けたりして、汚れている。
「ははァ、伊達ぶりが上がってるぜ――おいどうした、ノドいかれたのか」
「くそあの長っ鼻がハナ目障りなんですよそのハナが見切れてんじゃねえですよ鼻ですかほんとに鼻なんですかカード貫通させてたづな切りにしてやろうか」
「…おい」
「そっちじゃないそっちじゃないそっちじゃなくてこっ良い子だから言うこと聞きなさい園児か随分と図体のでかい園児でそっちじゃないって言ってるでしょうが方向音痴なんですか潜るんじゃねえ」
「…わかった、わかった落ち着け」
パイレーツマンを睨んだままぶつぶつと呪詛を垂れ流すマジックマンの異様さに、声をかけたことを後悔しながら、パイレーツマンはマジックマンを引っ張って隣に座らせた。
思っていた以上に、言うことを聞かない同僚を連れての作戦はマジックマンに強いストレスを与えているようである。実際は、言うことを聞かないどころか、揃って違う方向に全力疾走し出す二体の手綱を掴んだまま、という状態なのであるが、無論パイレーツマンはそんなことは知らない。
「飲め、飲んどけ」
手近なタンブラーになみなみとアルコール系エネルギーを注ぐと、パイレーツマンはそれを無理矢理飲ませる形で飲み干させた。取り敢えず黙らせよう怖いし。
「飲んだら寝ろ。もっと飲みたきゃ飲みな」
空になったタンブラーにもう一杯注いでやると、今度は自発的にそれを持ち上げ、ぐいと一息に飲み干す。
「よしイイ飲みっぷりだ」
もう一杯行けるだろう! と、ちょっと面白くなってきて尋ねると、がつりと膝を蹴られた。
一瞬パイレーツマンは本気で殺戮モードに入りかけたのだが、パイレーツマンが腰を上げるより先に、マジックマンの足が両方とも持ち上がる。野郎型としては勿体ないほどのいい脚をしている。
ちらと見惚れている間に、並んで掛けていたマジックマンは肘掛けへ頭を、脚をパイレーツマンの脚に乗せて、すっかり寛いだ状態である。
「おい、ここで寝る気か?」
そっちから乗せてきたのだから、触っても構うまいとパイレーツマンはマジックマンの腿を撫でる。期待したような柔らかさは当然ながらなく、パイレーツマンは勝手にがっかりした。更に、興味本位で内腿をそれらしく撫で上げてみても、ちょっと嫌そうに顔を顰めただけで無反応の様子にまたがっかりする。
面白くもない。
舌打ちをして酒瓶に手を伸ばすと、もぞもぞと寝心地の良い場所を探していたマジックマンが、細長く排気をした。
「もうあいつらほんと嫌です」
「頑張れ引率の先生」
お断りです、響いた声が非常に不愉快そうで、パイレーツマンはくつくつと笑う。
「…飲んだから寝ます」
「あー寝ろ寝ろ」
嫌なら適当にしておけばいいものを、面倒見が良いわけでもないのに苦労性なことだ。
かといって、代わってやろうなどとは絶対に思わないが、十回に一度くらいなら労ってやっても良いか、と天気次第の海賊は気まぐれにそんなことを思った。
2009/06/18 小説 Trackback() Comment(0)
COMMENT
COMMENT FORM
TRACKBACK