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2018/06/18

ゆびでてのひらで(C+F)

クラッシュマンとフラッシュマンでべたべた。
当方、クラッシュマンに変な方向で愛を注いだ結果、

 ・言語崩壊しているクラッシュマン
 ・賢い動物、くらいのクラッシュマン

となっておりまして、やや反応やしゃべり方に癖がありますので苦手な方はどうぞご注意下さい。
はくちもえ、なのか、な…
クラッシュマンははくちではないと思っていますが、はくちもえなのかな…



 どちらかといえばクラッシュマン向きの作戦だったかも知れない、とフラッシュマンは顎を撫でた。
 普段はブルーの装甲に覆われている顎一帯は、作戦中にあれこれやらかしているうち破損し、現在は素体が露出している。繊細な感応値を持つ指先で辿れば、顎から左頬にかけて、かなり大きく擦れている。いわゆる擦り傷状態になった表皮はぼそぼそとそそけ立ち、強めに触れると感覚センサーが痛みを訴えた。
 顔だけでなく、手足の装甲もひび割れて欠け、素体自体も削れているのが目立った。
 あちこち損傷しているのは仕方がない。五体満足で戻ってきたのだから重畳とフラッシュマンは考える。

 フラッシュマンが単独で破壊工作に赴くのは、初めてではないにせよ、あまり頻繁なことではない。
 突出した情報処理能力と時間を静止させる能力を持つ代わり、フラッシュマンの単純な攻撃能力は、兄弟機の中で最も低い。勿論、自律行動もままならぬ、そんじょそこらの一般機になど遅れを取るものではないが、大規模な施設破壊や、数にものを言わせて掛かってくる量産機をなぎ倒すような力仕事に向いていないのは事実だった。
「フラッシュ、」
 自己修理の手順を組み立てていると、廊下の端からクラッシュマンが駆けてくるのを見つけた。
 ワイリー城の床はロボットの重量に良く耐える特別製だが、小柄な割にエアーマンと大差ない重量のクラッシュマンが走れば、重く響くような音がする。だというのに、こんな近くまで気がつかなかったことに驚き、フラッシュマンは動きを止めた。
 戦闘で聴覚センサーがやられたかと側頭部を叩くと、カツカツと神経質な音がする。目立った異常は見られないが、ともう一度クラッシュマンに意識を向け、そこでようやくフラッシュマンはクラッシュマンがいつもと違うことに気がついた。その両腕にあるのは、円錐形のドリルアームではなく、白いハンドアームだ。
 そしてその掌を上に向け、何やら捧げ持つようなポーズで何かをのせている。
 何か、が、何か、を判ずるより先に、急に速度を落としたクラッシュマンの手皿から、それは滑るように飛び出した。放物線を描き、顔の真正面に飛んできた円柱を、咄嗟に片手でつかみ取る。
「お、っと」
 何のことはない、見慣れたブルーの円柱はエネルギー缶だった。
「すまん」
 再び駆けてきたクラッシュマンの表情は、いつも通り茫洋としたものだったが、僅かに違和感を覚えてフラッシュマンは顔を見つめた。漠然とだが、クラッシュマンの目に狼狽が読み取れる。
 なにを動揺しているのだと思っていると、顔がじりりと近づいてきたので一歩下がった。牽制ついでにエネルギー缶を前に出し、また受け皿状になった掌に、ほら、と缶をのせた。
「なんだ珍しいな。訓練か?」
 ぼうとフラッシュマンを見る、クラッシュマンの口が開いている。顎の締まりが悪いのか、鼻の排気が上手く行かないのか、このすぐ上の兄機体は口が開きっぱなしになっていることが多い。
 開いてるぞ、と顎の下を掌で突ついてやれば閉じるものの、クラッシュマンは尚もじっとフラッシュマンを見つめていた。
 クラッシュマンというのは、少し変わった行動パターンを取る機体だ。バブルマン曰く、動物以上人類未満の、というのも言い得て妙だがうなずけるものがある。
 実際の所、内面はどこまでだか知れたものではないのだが、確かによく口が開きっ放しになっているのと、反応がやたら散漫なところ、極めつきは言語機能に不備がある所為で、控えめに言っても一見彼は阿呆に見える。
 どういった思考処理の末に、彼が機械としては一種独特な反応を示すか、さしものフラッシュマンにも分からない。分からないが、フラッシュマンはクラッシュマンのそのテンポが嫌いではなかった。
「やる」
 じっとフラッシュマンの顔を見ていたクラッシュマンは、不意にエネルギー缶を押し返してきた。
「いや、俺は」
 咄嗟に固持したフラッシュマンを遮るように「メタルなあ」、クラッシュマンが掌で缶を押しつけながら言う。
「へこまさァゆうがあ、無理かろ」
 やる、ともう一度繰り返す。
 心配をされている、その事実にフラッシュマンは決まり悪げにぼろぼろの顎を擦った。直接メンテナンス室に向かえば良かったと思いながら、じゃあ遠慮無く、と缶を貰う。
 言われた通り、中央が確かに凹んでいるのを見ながらその場で飲み干せば、クラッシュマンはまたじっとフラッシュマンを見ていた。
「どうしたよ」
 やや呆れて鼻から排気したフラッシュマンに顔を近づけ、クラッシュマンはその傷跡を見てくる。どうも傷跡が気になって仕方がないのか、摩擦でぼろぼろになり、すすけた表皮を観察しているようだ。後方支援型であまり前に出ることのないフラッシュマンが、ボロボロになっているのが珍しいのかも知れない。
「こんな、面白くもねえでしょうよ」
 苦笑いしたフラッシュマンの目と、顎をちらちらと行き来し、クラッシュマンは匂いを嗅ぐようにフンと鼻を鳴らす。今のは本当に動物みたいだと呆れ顔で、しかし受容していたフラッシュマンは、クラッシュマンがおもむろに顔を寄せてきたのに反応が遅れた。
 べろ、と顎を舐められる。
「待った!」
 一瞬ぎょっとしたものの、フラッシュマンはその口を慌てて掌で押さえる。
「ちょっと、待って、なんで舐めンだ」
 煤がつくじゃねえかと、ピントのずれたことをまくし立てれば、クラッシュマンはがくりと音がしそうな角度で首を真横に折り、真摯な瞳はそのままに、はでな、と言った。
「は? ああ傷が? 見た目だけで大したこたねェ、いや違う。何で口あけんの」
「さわる?」
「口を使うなハンドパーツだろ! いや傷も触るなよ」
 余りにも不満そうな顔で、恨みがましく見つめられてフラッシュマンは途方に暮れた。
 何だその顔は。なんでそんな不満そうだ。
「ねぎ」
「ねぎ?」
「ねぎる」
「……ねぎらう」
「それ」
 意訳すればお前を労いたいのだと言い置き、クラッシュマンは両手をフラッシュマンに伸ばした。
 穏やかな視線を向けられて、その手を避け損ねたフラッシュマンは、半ば痛みを予測して身構える。しかし、がさつな動きをする普段からは思いも寄らぬほど、クラッシュマンはそっと、掌を頬にかけた。
 驚き目を見開くフラッシュマンの頬を見つめながら、ゆっくり、焦れったいほどにゆっくりと頬を撫でる。
「はでな」
「……そうかい」
 いつものあんたのほうがよっぽど派手に壊れてくるくせに、という呆れは飲み込んだ。
 痛々しげに見ているわけではなく、ただ真摯にフラッシュマンの傷を見つめるクラッシュマンが、一体何を考えているのかは分からない。
 彼が動物のようだと称されるのには、ひとつ、このじっと注がれる、不思議な圧力を持つ視線と無縁ではないだろう。
「フラッシュ」
 掌で顔を撫で回すのを止め、じっと弟を見つめていたクラッシュマンが名を呼んだ。
 のめり気味になる発声を何度か指摘してなおさせてきたが、今もやはりクラッシュマンは前のめりにフラッシュマンを呼ぶ。掠れてもつれた声が自分を呼ぶのを、どこか不思議に思いながらクラッシュマンを伺えば、かすかに、微笑んだような唇がフラッシュマンの目尻の傷に落ちた。
 啄む仕草で目尻から目蓋、少し飛んで擦り切れた顎、頬に触れて、すすけた鼻に留まった。唇だけで鼻を食み、低い鼻を撫で辿る。
 クラッシュマンはフラッシュマンの低い鼻が気に入っているらしく、前々からたびたび触りたがった。相変わらずの低い鼻への執着に、ふと笑いがこみ上げる。鼻の下から鼻の頭を舐め上げられて、とうとう吹き出せば、つられたようにクラッシュマンも笑った。
「でじか」
「ああ、大丈夫だ」
 ゆっくり肩を押すと、すんなり身体を離したクラッシュマンは、歯を見せずに喉だけでふっふっと笑い、ハンドパーツをゆっくりと持ち上げて、その鼻をぎゅうと押した。

 

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