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2018/12/19

苦情は話の通じる人に(B+F)

ハンドパーツから流れてもひとつ。
なんだかんだで続き物のような感じになってしまっており、
申し訳ございません…
兄弟会話練習、の気持ちで書いているので、
そこまで流れがはっきりしているものではありませんが。

※恐怖政治メタルマン注意
出てきませんが、一応。
穏やかな好青年メタルマンは残念ながらこちらでは扱っておりません申し訳ございません。





「話があるんだけどねー」

 ずずず、べたりばたり、怪談まがいの足音をさせつつ廊下を進んだバブルマンは、フラッシュマンがそうと分かるぎりぎりで停まった。廊下の向こうでおいでおいでと手招きをする、ワイリーナンバーズの三男は、何から何までが下手な怪談より恐怖をあおる。
 しかしあれでいて、案外己の「水難事故にあった無念の霊」然とした様子には全くの無頓着であるから、フラッシュマンは文句を言いづらいのだった。
 機械が幽霊だ魂魄だと気にするのはおかしなことのようにも感じるが、実際、科学で何もかもの不思議現象に説明がつく現在であっても、「可能性」と言うコメントはなかなか消えない。解説を外れてイレギュラーな事態は珍しくもなく、ロボットの幽霊だなどというナンセンスな噂も耳にして久しい。
 しかしまあ、そんなこともあるだろう、とフラッシュマンは特に拘りを持たなかった。
 恐いの怖くないのというのは、外界に存在の有無が証明されるか否かに関わりが無く、こころの中で起きる事象だと彼は認識しているからだ。いようがいまいが、実際には関係ないのだ。たとえ他者にとって滑稽であっても、向こうは本気なのだから仕方が無い。
 そうは言っても、フラッシュマン自体は別に怖くないから構わないが、苦情が出たら考えねばなるまい。気の小さな者が夜中の巡回中にでも出くわしたら気の毒だからである。
 さらにまかり間違って陳状がメタルマンに行ったらと、考えるだに哀れだ。
 ロボットがばかなことを言うなと一太刀で斬捨てられた挙句に、蹴り倒されないとも言えないのである。冷静に見えてその実、瞬間湯沸しである長兄のスイッチバチーンが一体どのタイミングで起こるか、残念ながら誰にも分からない。
 本当のところを言えば、メタルマンに相談をしに行く猛者がそうそう居るとも思えないのだが、一応は注意しておいたほうが良いだろう。そして、万一の際はなんとかせねばなるまい、と妙な方向でフラッシュマンは覚悟を決めた。

「顔が随分強張ってるねえ?」
 単なる感想が思索に入り込んで、最終的に取り越し苦労と言う名の妄想へ到ってしまったフラッシュマンは、訝るように尋ねられて我に帰る。脳内脱線を戒める癖で、コツコツと側頭部を指先で弾いた。
「話がどうしたよ」
「あー…そういえば、ここでいいのかなー。…まあいいや、君気にしないでしょ」
 促したフラッシュマンにうなずいてから、バブルマンは周囲を見渡す。今は誰も通りがからないが、人目を憚る密談であれば、誰でも通れる廊下は些か無用心といえる。しかしフラッシュマンが返事するよりも先に、バブルマンは移動しないことを決めたようだ。
「だから何の」
「そうそう、エントランスでねーちゅうちゅうべろべろするのは僕はどうかと思うのね」
「………………は」
 何か衝撃的なことを言われたように思う。
 拡散する思考に、フラッシュマンは動きを完全に止めた。タイムストッパーを発動させた記憶は無いが、時間が停まって感じ、何故かバブルマンのゴーグルの汚れを凝視していた。
 ええと、と何とか音声を捻り出せば、油が切れたかのようにぎぎぎと鈍く動く。ばかな。油ぎれというのは精神的なものが原因でもなるものなのか。
「あーあーちがうの。構わないよ? するのは好きずきだあねェ。でもねえ、疲労困憊で外から帰ってきて最初に見るのが弟どものキスシーンっていうのはねー、ちょっとどうかと思うんだー」
 間延びした口調で淡々と追い打ちをかけて行くバブルマンに対し、一声ごとにフラッシュマンは基盤の隙間からデータだけが気化して出ていきそうな気分に陥った。人間で言えば鼻から魂が出るような気持ちだ。
 まったくあり得ない事象ではあるが、思考と視界と手指の感覚がバラバラで、隔たりを感じる。つまりコレはそう言うことだろう、あるね。ロボットの幽霊いるね。
 ごく静かに、なまじ思考回路の処理能力が高いが為に、フラッシュマンはフル出力で動揺した。
 あの無様な様子を見られていたのだという羞恥と、あの阿呆という憤りと、おれは被害者じゃないだろうかという不条理さが脳内を一周し、最終的に出てきたのはエエエ、という意味を成さない不満の音だけ。
 兄弟一のスペックを誇る演算能力も情報処理能力も、どうしてこういう肝心なときには役に立たないのだ、とフラッシュマンは歯がゆく思うが、一辺に流れた情報が多すぎて渋滞を起こした結果であり、単純な思考回路の方が言葉にはつまらなかったかもしれない。
「俺がしたわけじゃ、ねえんです、が」
 なんとかギリギリの反論を試みると、バブルマンはひらひらと手のひらを上下に振った。
「しつけは大事だよー。駄目なときは駄目ってちゃんとね」
「いや、…いや、幾ら何でも無抵抗ってわけじゃ、」
「メタルは最初にビシャーって張り飛ばしたあと頭踏んでたねー」
 脳裏にありありと思い浮かべることの出来る情景に、フラッシュマンは言葉を失った。
 警告無しの情け容赦ない平手(裏拳かも知れない)。
 吹っ飛ぶクラッシュマン。
 吃驚しながら受身はとっただろうに。
 そのまま後頭部を踏…いや。
 踏むと言うか、恐らく鉄板を砕く勢いの足刀で踏みつけられてノックダウンコール。
 稼動したての赤子に等しいロボットにも武闘派か兄よ。
 稼動直後の暴走と強制停止でクラッシュマンは言語機能と知能形態に歪みが出たと聞いたが、まさかメタルマンのDVまがいのしつけの所為では、いや、そんなことは、いやまさか。虐待か兄。
 どうしても否定しきれない不憫さに、フラッシュマンは額をそっと押さえた。
「…………いや俺にアレと同じ対応を期待すんな」
「そうお? メタルはクラッシュ甘やかすけど、基本しつけは厳しいからさー」
 甘やかしという言葉に、フラッシュマンは意味もなくごくりと咽喉を鳴らした。
 どんなに蹴り飛ばしても張り飛ばしても、丈夫なクラッシュマン相手に手加減無しでOKだと思っている節のあるメタルマンは、訓練でも日常でも物凄い勢いでクラッシュマンに攻撃を仕掛けるが、まさかあれが彼の愛情表現なのか。そんな蛮愛を注がれたら、フラッシュマンは一撃で粉砕されてしまう。
 やばんじんどもめ。
 気持ち上、顔が青くなるフラッシュマンには頓着せず、バブルマンはひとり小さく頷く。
「まあクラッシュは多分お咎め無しだよね」
「……ハ?! おい俺だけか?!」
「ねー」
「ねーじゃねーよ! つかなに、なになんいたの?!」
「んー、や、僕とクイックが居ただけで、メタルには僕が言ったかなー。どうなのよって話を」
「か な?!! なんでそういうの俺に先に言ってこねーのよ?!」
「あ、先に言って欲しかった? ごめんねえ。うっかりうっかり。面白くってさー」
 
「面白くって?」
「え? …うそうそー」
「今の素の声だろ!?」
 そんなことないよと言いながら、今のがすべての真実であるという声を聞いてしまい、フラッシュマンは絶望の縁を覗く。あはははは口でかいねえという意味の分からないごまかしは、一体どういうフォローだ。
 いや、どういう状況下でも口がでかいはフォローではないが。
「まーだからねー、ちょっと気をつけてみてよ」
「だ、っから、クラッシュに言えよ」
 自棄になって噛み付けば、バブルマンは困ったように首を巡らせた。
「クラッシュはほら、その場で怒らないと何が悪いかわからないから。もう無駄だって」
「どうぶつか…!」
「そう思えば腹も立たないでしょ」
 そんなわけがあるかと呻りながらも、納得してしまった時点で、フラッシュマンはあの兄にあまり強く出られない自分を自覚した。それに、今からしつけとやらをしなければならないのか、と思うと目眩を通り越して頭痛がする勢いだ。
 くそめんどくせえなふざけんな、と呟き、フラッシュマンは溜息を一つ、来た廊下を戻り始めた。
 どうして俺が兄機体のしつけを、と、未だ不条理を噛み締めていたフラッシュマンが、少し遅れて振り返ったバブルマンの、忘れてたけどという付け足しを聞いていたかどうかは。

「もう一頭のほうにもねー、気をつけるんだよー」

 定かではない。
 

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