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2018/07/19

ヒプロメロース

思いあまってクラフラ投下。
いつもとおなじ、べたべたしてるだけです。
いつもよりべたべたですが。

拍手、いつもありがとうございます。嬉しいです!

 

 整備室で部下用のパーツを研磨していたフラッシュマンは、部屋に近づく音を捉えて手を止めた。床に響く足音の一つは規則正しい歩調で、もう一つはのしのしと重たげに響く。フラッシュマンは二対の音の主をメタルマンとクラッシュマンと判断し、作業を中断して立ち上がった。
 彼らは二日前に、ワイリーの名を騙って某国の製薬工場を爆破した、襲撃犯を制裁に行っている。予定より一日ばかり帰還が早いが、作戦の変更があったのだろうかと訝るフラッシュマンの目の前で、整備室のドアがスライドした。
「お疲れさん」
「ああ、今戻った」
 声をかけると、フラッシュマンを認めて目を瞠ったメタルマンが短く応じる。その後ろにいたクラッシュマンは瞬きをゆっくりと一度し、綻ぶように笑みを浮かべた。
「ただいま」
 へらりとクラッシュマンが笑った瞬間に、その口からぼたぼた、と透明な液がしたたり落ちる。
 突然で意表をつかれたものの、フラッシュマンは静かにメンテナンステーブルの脇に手を伸ばした。掴んだ布は、きれいかきれいでないかと言ったら、まあ台拭きだ。使い込んだボロ布ではないし、これは下ろしたばかりだし、まあいいだろうと決めて拭ってやれば、案の定、クラッシュマンは特に嫌がらなかった。
「あッが」
 ぼたぼたぼた。
「……おかえり。どういたしまして。何なのどうしたのこのヨダレは」
「アー、いつもと液、ちがぁ」
「垂れてんぞ」
 赤子か牛かという見事なヨダレっぷりに辟易しながら、フラッシュマンは再度涎の滴り落ちるクラッシュマンの口を拭った。説明を求めてメタルマンを見ると、メンテナンス用具をテーブルにそろえて並べてたメタルマンは、さっきから何を捜しているのか、テーブルの下やラックを探っていた。
「なあどしたのこれ。…何捜してンの」
「ああ…口の中が乾くからな、補潤液の配合を替えたらどうかと思ったんだがな。失敗した。フラッシュ、補潤液がどこにあるか知らないか」
「え、えー…んー、補充したの先月頭だしなあ…所定の場所にないなら在庫切れじゃねえか」
 クラッシュマンの口の中は、乾燥しがちである。
 日常的には口を開けっ放しにしている癖の所為だが、戦地ではその戦闘スタイルから、爆風に晒されることが多いためだ。そうは言われているが、もしかすると他にも原因があるのではないか、とメタルマンは考えているようだった。
 日常生活にも作戦にも支障のない部位であるのだが、メタルマンは前々からクラッシュマンの口が渇い
ていることを不憫に思っているようで、たびたび保湿ゼリーを与えたり新しい補潤液を試したりと、意外にもこまめに世話を焼いている所を見かける。
 実際に舌が動かないことで陥る不具合といえば、せいぜいがコミュニケーション不全と味覚の低下あたりだ。しかし、もともと言語機能のあやしいクラッシュマンは話せないくらいでは今更コミュニケ-ション能力に大差はないと思われたし、随分前に舌が灼けて擦れたままであるため、味覚もやや怪しい。
 爆撃による素体の変色やカラーリングの未調整など、他の部分は気にしないのに、一体何がそこまでメタルマンの気持ちを動かすのかはフラッシュマンにはよく分からない。
「最初は問題なかったんだが。どうやら配合の関係で極端に熱に弱くなってたらしい。作戦中あっという間に粘度が下がって、以来垂れっぱなしだ」
「はあ? 何使ったのよ。こないだバブルが調整したのじゃ駄目だったわけ」
「あらあ味ィすかん」
「だそうだ」
「垂れてる。垂れてるからお前涎ためんな」
 だらだらと涎を垂らすクラッシュマンの顎を拭い、フラッシュマンはクラッシュマンの顎をのけぞらせた。
「ちゃんと飲み込めば垂れねーだろ、ほら」
 ごくんってしなさい。
 フラッシュマンは片手でクラッシュマンの口を塞いで上向かせ、無理矢理飲み下せさせようとした。クラッシュマンは不満げに、メタルマンとフラッシュマンを交互に見ていたが、ややあって、不承不承という様子でグゥと喉を鳴らす。しかし、納得していない顔でフラッシュマンをじろりと見た。
「……飲めたか?」
 恐る恐る手を離し、確認するように覗き込んだフラッシュマンに、クラッシュマンは口を開けてみせる。すぐさま、ぼたぼたと滴が垂れ、フラッシュマンは頭を抱えた。
「…飲めてないな」
「補充した分全部出せば止まる。そろそろ切れると思うから出させておけ」
「えええェエいいのかコレ、まだダラッダラ垂れてんだけど」
「仕方がないだろう」
 それより補潤液を捜すのを手伝ってくれと手招きされて、フラッシュマンはクラッシュマンの口元に布を押しつける。
 乾燥だわ水っぽいわで難儀なこった、ブツブツと呟きながら呼ばれた方へフラッシュマンは足を向けた。しかし、歩き出す前にぐいと腕を引っ張られ、前へつんのめってバランスを崩す。
「ッてェ、…なん、」
 何のつもりだ、という声は達せず、振り返った瞬間、頭突きを喰らわせる程に間近に迫ってきていたクラッシュマンに、フラッシュマンはばくりと言葉を喰われた。
「ちょっ、」
 咄嗟に腕を突き出すものの、勢いを殺すことは出来ず、水っぽい舌で顔を舐められる。常に頬や鼻を舐め回すクラッシュマンの舌は、擦過して僅かに毛羽立ち、ざらざらとしている筈だったが、十分すぎる程に潤っている所為か、その凹凸をあまり感じない。
 顎と言わず頬と言わず、べたべたと濡らされるのに怯んだフラッシュマンは、内心の形容しがたい叫びを、何とか必死に耐えていたが、ぬるい涎が顎からばたばたと垂れるにあたり、とうとう耐えきれずに、おおおおおと意味不明の唸り声を上げた。
「メ、メタル! これ! この牛!」
 ぎりぎりと手を突っぱねても押し返せないクラッシュマンに、フラッシュマンは半泣きで長兄に助けを求める。
 ものすごい。ぬるくてべたべたでとてつもない。牛か蛙か赤子でなければなめこか潤菜だ。顔を拭きたくてたまらない。
 その様子を呆れたように一瞥し、メタルマンは、ふんと鼻で息を吐く。
「いつもしてるだろうお前ら」
「涎が凄ェんだよ!」
 ああ、頷きをひとつ、頭を捻っただけで元の場所から動きもせず、メタルマンは手を軽く振った。
「そのうち補潤液もなくなるから」



 クラッシュは、ただいまおかえりを言ったらフラッシュの顔を舐めていいと思っている。
 

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