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2024/04/20

牙よりも爪よりも

そうだ。ほもがたりない。

と思ったのと、
一時間程四苦八苦して絵板ファイトしていた絵が固まってさようならしてむしゃくしゃしたのと、
そういえばクイックがいねえと思ったのとで、
発作的に犯行に及びました。

速光は大変好物なのですが、クイックが自分でよくかみ下せなかったので二の足だったのですが、
ちょっと分かってきたのでぽつぽつ出していこうと思います。
ぽつぽつ…ぱらぱら…うんまあ遅いですよ。

そしてぬるいですよ。





「いるかー」
 ノックもなしで唐突にドアがオープンし、続いた声に、フラッシュマンはまたかと思った。

 写真を整理していた手を止め、背後を振り返れば、見慣れた赤い機体が部屋をのしのしと踏み入ってくるところだ。言っても無駄と知りつつ、フラッシュマンは引きつった笑みを浮かべる。
「いい加減ノックをして頂けませんもんでしょうかねえ」
「ああ。そうかすまん」
 それは思いつかなかったとばかりに目を瞬せた押し込み犯、いやクイックマンは、フラッシュマンの机の直ぐ傍まで来ると、コンコン、と机の上をノックした。
「………部屋に入る前にだわ」
「ああそりゃ今度な」
 誠意の欠片もない様子でクイックマンは頷いてみせる。
 フラッシュマンは思わずクイックマンを眇め見た。その視線を受けて、クイックマンはハハと何を考えているか分からない乾いた笑いを返しただけだが、絶対守らない、というか、覚える気もないのだ、とフラッシュマンはじわりとコア付近がチリつく感覚を覚えた。
 過去に、何度かフラッシュマンはクイックマンにノックをしてほしい旨を伝えている。マナーだろう。
 フラッシュマンの主張は無私された。無視というか、この男は、話を聞かないので、恐らく頭からすっぽ抜けているのだろう。三度無視された段階で、フラッシュマンは部屋にロックをした。
 が、厄介なことに、拒否やら逃走やらは余計に火を点けるものであるらしい。ロックをしたところでドアが壊されるだけだと言うことをフラッシュマンは知った。以来ロックはかけていない。
「クラッシュだってノックくらいするっつのに」
「おう、それだそれ」
 呆れて独りごちたフラッシュマンの呟きを拾って、クイックマンはおもむろにフラッシュマンの肩を掴んだ。ぐい、と思いがけず強い力で椅子に座った身体ごと振り向かされて、フラッシュマンは反射的に身構える。
「っどれ…だ、っ」
 思うよりも迫ってくるクイックマンに驚いて、フラッシュマンは左手を咄嗟に自分の前に持ち上げた。しかしそれは容易く掴まれて制止の意味をなさず、ならばと蹴る目的で脚を持ち上げれば、それより先に脚の間に身体を割入れられる。
 より近づいたクイックマンの勢いで、椅子のキャスターが後ろに進む。かくりと引かれる感覚にバランスを崩しかければ、ほぼ目鼻の先に迫ったクイックマンの、真摯な眼差しに会った。
「な、」
「シッ」
 何を、と言う問いは唇に指を置いて制された。
 酷く真剣な面持ちで、クイックマンはフラッシュマンの顔をゆっくりと辿る。

 真顔のクイックマンを見かけることは少ない。

 普段、どちらかといえばクイックマンは、朗らか、であるとか、爽やか、といえる表情を浮かべていることが多い。大概彼は笑顔だ。しかし、その目が獰猛に光っているのをフラッシュマンは知っている。
 戦闘中に対峙するとき、その整った顔で笑いながら、目は爛々と光っているのだ。静かだが、しかしどこか昏い輝きは不穏に過ぎる。闘争欲求が強いのだという。柔らかな笑みを浮かべている分だけ、より剣呑な感じがした。
 そのクイックマンの見慣れない真剣な眼差しに、フラッシュマンはひどく緊張する。身動ぎしたが最後、何が起きるか分からないと思った。
 ぐいぐいと雑な動きでフラッシュマンの顔を摘んだり伸ばしたりしつつ、おまえ顔柔らかいなとかなんとか言いながら、クイックマンはじろじろと観察を続けていたが、急に至近距離で口を開いた。
「ヒンヤリしてるな」
 言葉が唐突すぎて、フラッシュマンは言葉の意味を捉えあぐね、疑問符を浮かべたまま慌てて応えを返す。
「は? あ、あァ、俺、水冷式だから」
「ふーん。水かァ」
 確かに冷たいかもなあと自問自答式に呟く。
 そうして不意に、ぺとりと形の良い鼻をフラッシュマンの眉間にくっつけた。僅かに暖かい。
「なッ、鬱陶しいんですが?!」
 一瞬の間をおいて、おかしいだろうと疑問符が弾けたフラッシュマンは、勢いで腕を突っぱねた。
 おかしいだろうというか何だ。何なんだ!
 しかしながら、僅かに顎をのけぞらせただけで、クイックマンはびくともしない。更に恐慌状態の弟を斟酌する気もないようで、そうかあ、と納得したように呟くばかりだ。
「良い匂いがするって言われたから嗅ぎに来たんだけどな」
「は?!」
 良い匂い、におい? 誰がだ。なにがだ。ていうか誰からだ。
 更に混乱に陥るフラッシュマンを前に、クイックマンはようやく顔を話して、ヤレヤレと言いたげに首を振った。
「水の匂いかあ?」
 当てが外れたとでも言いたげである。がっかりした様子を隠しもしないので、今度こそフラッシュマンはクイックマンの腕をはね除けた。
「意味が分かんねーよ!」
「だから確認」
「言語回路要点検! 伝達能力が貧困すぎんだろ!」
「そういうのは、酌め。得意だろ」
 こともなげにハハハと軽く笑い、しつこくクイックマンはフラッシュマンの顔をこねくり回す。
 その様子が楽しそうであるのが非常に不愉快で、どうにか止めさせようと腕を掴むのだが、フラッシュマンの抵抗などものともせずに、クイックマンは頬を摘んだり鼻を押したり口を引っ張ったりしてにやにやしている。
 ぐにぐにと頬をいじくり回していたクイックマンが、戯れに口に指を入れる。そのまま横に伸ばそうとするので、がぶりと噛み付いてやると、一拍の間を置いて、その口角が愉快げに持ち上がった。
 しまった、とフラッシュマンが後悔する間もなく、クイックマンの目が剣呑な輝きを見せる。どうも、常に満たされていないらしい、兄の闘争欲求を変に刺激してしまったようだ。
 口に入ったままのクイックマンの指が、ぞろりと下顎の縁を撫でた。気色の悪い感触に、咄嗟に指を離して顔を引けば、待ちかまえていたようにのけぞった喉笛に喰いつかれる。
 驚きでフラッシュマンは身をすくませた。
 装甲の隙間、素体が露出している部分を狙って咬みついたクイックマンが、ぎち、と表面を歯で躙る。直ぐその傍をメインケーブルが通っていることにひやりとした。全ての動作が憚られて、排気が滞る。視線だけでクイックマンを探る。鮮やかなグリーン。
 言葉を失う。ゾッと瞬間的に心身が縮んだ。
 酷薄なけだもののめだまが、ひどくうつくしい。

「俺はこっちのほうがいいなア。お前の素体」
「セクハラだろ」
 うんざりしながら呟いたフラッシュマンの言葉を受けて、クイックマンが雑誌の表紙でも飾れそうな爽やか顔でからりと笑った。

「なんだ感じたのか」



 ああこいつしねばいいのにとかワナワナ震えるか、静かにタイムストッパー充填始めるか迷います。
 タイムストッパー充填に一票。

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2009/05/15 小説 Trackback() Comment(0)

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