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ブルースが倒せない…!
タップスピンの使い方が…いまひとつ…
ジャンプしたままくるっと回ってないとダメってことなのでしょーか。
当てに行くの難しい…ん…ですけど…飛び道具跳ね返せるわけじゃないのか…
蛇には会えました。会えただけです。でも高飛び選手は避けられるようになりました。
影に会えたのは夢だったのかも知れないのです。兄がとにかく倒せないよ。
つづきは緩いクイフラです
一目惚れという、大概に見た目と誤解と直感に基づいた即決断について、クイックマンは否定派ではない。かといって肯定する気もないのは、クイックマンには一目惚れの経験がないからだ。したこともないのに否定も肯定もない。
しかし、第一印象のみで即決する、というのは潔い、と思う。
「…俺そういうのねえもん。知らね」
他に聞けよ、面倒そうに答えた青い弟は、白と黒で仕切られたタテヨコ八マス正方形のボードから、小さな駒を持ち上げる。
「何やってんだ」
「チェス」
「ひとりで?」
「鍛錬中なんですう」
絶対負かしてやる、と呟いたフラッシュマンの笑みはお世辞にも、花の綻ぶような笑顔、とは言い難い悪人面相であったが、活き活きとしているなとクイックマンには映った。
その間にもフラッシュマンはコトコトと白と黒の駒を互い違いに動かす。
中央最前列の小さな白駒を前へ、遮るように黒の歩兵も前へ。
右手の白馬が前へ進めば、対角線上から黒の馬が前へ。
淡々と駒を動かすフラッシュマンは、実戦さながらの顔をする。盤上の戦いに随分と全力だなと思いつつも、その真剣な横顔をのぞき込めば、ようやく顔を上げたフラッシュマンが煩そうに顔を顰めた。
「手暗がりになる。じゃますんな」
気が散る、あっち行け。犬猫を追い払うような手つきで邪険にされるが、クイックマンはそうか、とあっさり返して気にも留めない。ひとつ瞬きをし、勝手に向いの席に腰を下ろした。
「おい」
眉間をぎゅっと寄せたのはフラッシュマンの方で、いぶかしむように視線をよこす。
「相手してやる」
「…またまた。お兄様が? はっは。邪魔すんなあっち行け」
相手にならないと鼻で笑うフラッシュマンを一瞥し、クイックマンは盤上に手を伸ばす。飛び出した白の僧兵を黒の歩兵で牽制すれば、フラッシュマンがおい、とクイックマンを睨む。
「はい。次は」
「あー…なんだよ本当にやんの?」
途中参戦ってどうなのよとぶつぶつ言いながら、フラッシュマンは盤上に視線を落とした。組み立てていたものを邪魔されたのが気に食わないのか、ムッとした顔で馬を掴み、焦れたように中央へ踊り出る。
「自分と遊んでるのも楽しそうだけどな」
「なに、退屈させないっての? 自信ありげですねえ」
小うるさい白馬を黙らせてやろうか、黒い僧兵を摘み上げ、クイックマンは一足跳びに馬の斜へ誘い出た。プレッシャーをかける。
盤を見ていたフラッシュマンが、ふと顔を上げた。
「一目惚れがなんだって?」
メタルマンは、自分の短気を棚に上げて「性急なだけだろう」といい、バブルマンは「騙されやすいタイプなんじゃない」とにべもない。エアーマンはどうとも答えなかったが、似たり寄ったりの様子で手をヒラヒラと振っただけだ。
まどろっこしい論理を介在せず、結論のみを瞬時に弾き出す。
勇み足だとメタルが言い、勘違いだとバブルが宣うそれ。
クラッシュマンだけがきっぱりとある、と頷いた、それ。
「してみたいもんだ」
「はあ?」
フラッシュマンは呆れを滲ませた半眼でクイックマンを見、溜息をついた。
「”恋がしたい”の? なに、エラー?」
誰にも分からない、もしかすれば本人にも分からないレベルの処理速度で弾き出された答えではないのか。しかし、それがゼロかイチか、或いはイエスかノーか。だれの目にも明らかに正否の分かる結論であるならともかく。
「お前もバブルと同じ、勘違い推進派か」
「一般論じゃねーよ、あんたの話。どっかおかしいのか」
「いつも通りだろ? ていうか恋はするんじゃなくて」
「落ちんの? ふっる!」
げらげらと火がついたように笑い出したフラッシュマンに、さしものクイックマンも閉口する。
「ま、落ちるってんなら、罠みたいなもんだな」
まだ笑いを滲ませた声で言いながら、フラッシュマンは白馬を動かし、歩兵を屠りにいった。
白馬が動いたことで一息に隙が出来る。躊躇いもせずに僧兵が女王を殺し、その速さにか、ぱちりとフラッシュマンが瞬きを一つ、クイックマンを見た。意外そうに瞬く目の色は緑。
「なんだ? 落ちたか?」
覗き込んだクイックマンの鼻先で悪人面が再び笑う。口角を引き上げた顔はしかし、少しばかり得意げで返って無邪気ないきものに見えた。
黒の僧兵の居なくなった場所へ、白の僧兵が脚を進め、その槍を王にかけんとする。守り手を失ったのは白の王ではなく黒の王の方で、俄にきな臭くなった戦線に一歩前へ逃げ出せば、黒王を追って、一頭の白馬が解き放たれる。待ちかまえたように堂々と、歩兵を踏みつけた白馬に並ぶ。逃げ道は、ない。
「あんたが落ちたな」
鮮やかなチェックメイトに、クイックマンは思わずおおと感嘆の声をあげ、フラッシュマンの方を見た。
「口説かれちまったな」
「邪魔だっつってんだろが」
2009/06/13 小説 Trackback() Comment(0)
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