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下でうごうご言っていることの流れで。
雲が流れる様はなんであんなうつくしいのでしょうねー
ていうのを隊長に頑張って貰いました。
最近隊長がひとり上手で申し訳ございません。
コアがひとつ、不整脈めいて跳ねる。
何気なく目をやった夕闇の空に目を奪われて、フラッシュマンは意識外に脚を一歩前へ動かした。
すこしだけ彩度を落とした水色の空、藤色の雲、ちぎれて羽毛の先に似た切れ切れの雲。
驚くべき勢いで、雲が中天を流れてゆく。落ち着きなく、浮わついたパルスを刻むコアをもてあましながら、フラッシュマンは脚を動かした。
歩くより少しだけ早く雲が流れるせいで、遠くの雲と流れる雲は互いに向かって進んでいるように見える。実際は雲がすれ違うことなどなく、手前の雲が遠くの雲を追い越して流れるだけだ。
遠近感と速度の差による目の錯覚。しかし、フラッシュマンにはそれが一瞬の邂逅に映った。
フラッシュマンは手にカメラを持ちながら、シャッターを切ることはおろか、ファインダーを覗くこともできずに、窓に顔を向けたままそわそわと歩いた。
窓が終わってしまうところで慌てて走り、テラスに飛び出す。飛び出した場所はワイリー研究施設の中庭に面した低層フロアテラスで、周囲に何やかやと遮蔽物があり、空全体を見渡すことは叶わなかった。
しかし、今から場所を移すのは無理だ。
黄昏時の景色は、一秒単位で変化することをフラッシュマンは知っている。そして何より、三百六十度のパノラマではなくとも、景色は十分にフラッシュマンの目を奪い、ただ立ちつくす以外の術を与えてはくれなかった。
手前の藤色をした雲が視界の中心を流れ去ると、幾分か空が広くなる。空の底辺は切れ切れの雲に囲まれ、ふちの部分はウッドマンの森の木々や、クラッシュマン管理区域にある天へと伸びる建造物に遮られ、大地と接することなく途絶えていた。
ふちに行く程雲が多く感じたが、遠すぎて重なって見える雲々は、実際に真下まで行けば、いまフラッシュマンの頭上と同じように切れ切れである筈だ。その証拠に、外縁は暗くはあるが黒くはない。
雲と雲の切れ間から射し込む朱光が、薄く雲の底を照らす。
それが刻一刻と色を増し光を増し、柔らかく染まるだけだった雲底は、今や鮮やかな珊瑚色を呈していた。空をおおう雲に一切の色を奪われてしまうのか、不思議なことにフラッシュマンの頭上から雲の後ろに至るまで、空の色は無垢な水色のままだ。
途絶えた雲を繋ぐように、細い扇型の帯が珊瑚色を滲ませるおかげで、フラッシュマンはようやく太陽の位置を把握した。
姿の見えない太陽は、雲の向こうで沈み掛かっているところだった。隙間から雲を染める光が益々勢いを増してゆく。
クラッシュマン地区の一番高い骨組みにかかる場所で、垂れた雲の底が輝いている。
重なる雲の間から点々と、切れ間が金赤の閃光を抱く。雲の群青との対比が鮮やかだった。
不意に胸郭が軋み、フラッシュマンは手の中のカメラを取り落としかける。それでも広がる景色から目を離すことはできそうもなく、浅く短い排気の間隔にフラッシュマンは喘ぐように口を開いた。
苦し紛れにまたたき、フラッシュマンは耐えきれずに白い閃光を自ら放つ。
タイムストッパーが発動するとき特有の、高く澄んだフィラメントの振動音が響く。
さわさわと揺れていたテラス側の樹木が動きを止める。
けれども、爆発を孕むかのような金色は、フラッシュマンの意図とは別に、また一秒ずつ力を失っていった。
ああ。
軋む胸郭を、震えるコアの拍動を、絶え入るような喘ぎを、フラッシュマンは強く掌を握りしめてやり過ごす。
空は最後まで水色を残したまま、やがて急速に夜色に沈んだ。
雲みたいな顔して漂ってたうすい月が、いつの間にか煌々と光り出す所もすきです。
空はどんだけ見てても飽きないですねー
2009/07/31 小説 Trackback() Comment(0)
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