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2018/12/19

レアアイテム

12/3はマジックの日! おめでとう!

そしてリクエスト大変おまたせいたしまして申し訳ございませんでした…
パイレーツ×マジック です。+のような気もしますが割と仲良し。
リクエスト、ありがとうございました!
粗品ですが、楽しんで頂ければ幸いです。

※作中の宝石のについては(価値とか稀少性とかもろもろ)割と嘘っぱちです。
 鵜呑みにされぬようご注意下さい。


「力を入れないということは、力を込めるより遥かに難しい」
 マジックマンの手のなかで、チリチリと微かな音をたてながら、ガラスのボールが三つ転がる。手のひらから落とさずに、指だけをひらひらと動かしてボールを回す、その器用さは理解しているものの、こうして目の当たりにすると随分簡単そうに映った。
「卵も掴めないような制御能力ではお話にもなりませんが」
 ちりりん、軽やかに鳴ったガラスボールを更に二つ、どこからか増やしたマジックマンは、各指先に一つボールを乗せて指を伸ばした。
 ワン、ツー、スリー。
 薄いガラスが鈴の如く細い音を奏で、マジックマンの指先でぴんと爆ぜる。
 きらきらと零れて消えたガラスの代わりに、その指先に姿を現したのは、深緑の石だ。きらりと光を受けて輝く、不思議な陰影を持つ石にパイレーツマンは目の色を変える。
「見事だな」
「おや珍しい」
 隻眼をパチリと瞬かせたパイレーツの感嘆の声へ、マジックは僅かに目を細めた。しかし、拍手もなしに手を伸ばしてきたパイレーツマンに、やっぱりねと同じ意味の溜息で応じる。
「おい、ちょっとその石見せろ」
「さてねえ」
 ヒラリヒラリとパイレーツマンの手を避け、今度はフンと鼻を鳴らして、マジックマンは掌を握りこむ。ギュッと握りしめた左手を、パイレーツマンは器用に鈎手で引っかけて引き寄せた。
 ちょっと、マジックマンが非難めいた声をあげて鉤を外そうとするのを、軽く捻る事でいなす。
「人の商売道具になんてことするんです」
「種も仕掛けもないんだろう、少し見せろ」
 マジックマンがじろりと睨みをきかせるが、しゃあしゃあと要求してくるパイレーツマンは応えた風もない。
「少し? ご覧になりたいですって? 私の手品を?」
「石をな」
「空気を読むとか出来ないんですか」
 パイレーツマンの鼻先で、マジックマンはいやみたらしいほどゆっくり、指を一本ずつ開いて見せた。
 当然のように宝石は姿を消しており、掌には先ほどのガラスか何か、キラキラとした粉末が少し光っているだけだ。
 パイレーツマンはしばらく、未練がましい様子でマジックマンの手へ視線を注いでいたが、同様に自分の掌を見ていたマジックマンは、こともなげに言い放つ。
「全く、そんなせっかちだとご婦人方にも逃げられますよ」
「どこぞの馬鹿と一緒にされてもかなわんな」
 ハ、パイレーツマンは、鼻で嗤ってマジックマンの手を放り出すように離した。
「おい、少し見るくらい良いだろう」
 テーブルに肘をついて、尚も食い下がるパイレーツマンに呆れ、マジックマンは仕方ないですねと大仰に肩をすくめて見せた。
 見るだけですよと言って、ヒラヒラと手を振ったマジックマンは、先程パイレーツマンに拘束された左ではなく、右手から再び石を取り出してみせる。
 透明な苔色の中に、折り重なるような濃淡が美しい親指の先程の石は、落ち着いた光を称えている。
 変わった色合いだな、とマジックマンは思うばかりだが、パイレーツマンにとっては違ったらしい。目に見えて色めき立ち、一つしかない視覚センサーをパチパチと閃かせる。
「おい、これどうしたんだ」
 一見何気なさを装うが、もう遅いとマジックマンはマスクの下で苦笑いをする。そんなきらっきらさせて、気のない振りをするだけ無駄というものだ。
「この間バイト先で貰ったんですよ」
「は?! 何のバイトだ」
 ふざけるなとでも言い出しかねない顔で凄まれて、マジックマンは一瞬応えに詰まる。
「秘密です」
「いかがわしいな」
「失礼な」
「何をしたらこんな見事なモルダバイトがほいほい貰えるかご紹介願いたいものだな?」
 モルダバイトは、ここ数十年飛散地域から産出がなく、既に枯渇したと言われて久しい石の一つだ。
 隕石の衝突によって生じる天然ガラスの一種で、テクタイトとも言われ、稀少とはいえ、かつてはさほど価値もなかった石である。テクタイトの多くは不透明で黒色の塊だが、中には透明で美しい色を有し、宝飾品として用いられるものがあり、近年、それらの価値が急騰しているのだった。
「ああ、そういうんですか? 私は色が地味でどうも好きじゃないんですけど」
 怒りの余りといった体で言葉を失ったパイレーツマンが、叫び出しそうに一回起ち上がりかけ、もう一度憤然と椅子に座り直す。マジックマンは気のない様子でもう一度手の中の石を眺め、やはり地味な色の石にしか見えないが、と首を傾げた。
 それを見ていたパイレーツマンが手を伸ばしてくる前に、石を手の届かない所へ避けると、鋭い舌打ちが後を追ってきた。
「貴様、おい、」
「あげませんよ」
「宝の持ち腐れという言葉を知らんのか?!」
「おや、あなた方の蒐集癖のことですか?」
 理解しかねるといった様子で一刀両断され、パイレーツマンはぐうと唸った。パイレーツマンのそれは資金稼ぎだと言おうにも、半分以上は趣味であるにも違いないからだ。「あなた方」の指すもう一人、グランドマンに到っては、まるきり趣味であるのだから放っておけばいいが。
「価値がわからんなら俺によこせ。代わりのをくれてやる」
「残念、これはグランドとの取引材料でして」
「何だと」
 マジックマンの口から出た名前に、パイレーツマンは元々あまり宜しくない目つきを更に険悪にして、マジックマンを睨み付けた。
 金銀財宝珍品奇品、キングの純正初代と二号機が、揃って宝物コレクターであることは周知の事実だ。単純に珍しいものが好きなグランドマンと、財宝らしい財宝に目がないパイレーツマンとでは趣味分野が異なるせいか、あまり奪い合いにはならないのだが、稀にこうして欲しいものが重なることがある。
「なんていいましたっけね。この間見せて貰った、えーと、ライムグリーンの」
「ペリドットか?」
「それそれ。あれと交か」
「貴様らは相場をしらんのか! 野蛮人どもめ!」
 ついに嚇怒と咆えたパイレーツマンは、口から火でも吐き出しかねない勢いだ。
 グランドマンの持っているペリドットといえば、掌大のあれだ。大きい分だけ不純物が多いのが普通だが、どこから掘り出したのか、クリアな塊を持っているのをパイレーツマンも知っていた。とはいえ、原石に興味はないので、切り出さねば分からないのだが、稀少は稀少だ。
 パイレーツマンにとって怖いのは、マジックマンはアレを五寸刻みにしてしまいかねない無神経さを持っているところである。
 凄まじい大声に、マジックマンは聴覚器を形ばかり塞いで見せ、面倒くさそうに溜息をついた。
「別に私は色つきガラスでも全然構わないんですけどね。まあ曰くがあった方がお客様の食いつきも違いますし、あれなんかはお嬢さんがたが好きそうでしょう、ああいう可愛らしい色の石とか」
「……おい、なにがいい何なら取引に乗る」
「エー、貴方の趣味はなんかごてごてしてて嫌なんですよねえ」
「貴様に言われたくないわ! 女が好きなヒカリモノと言えばダイヤだろうが」
「ダイヤってあんまり映えないんですよね。それならスワロフスキーの方が」
「緑が良いならトルマリンをくれてやる!」
「トルマリンなら色が別れてる奴がいいです」
「……バイカラーは手持ちがない、が、ああでもクソ、あれは釣り合わん」
 パイレーツマンはあれこれと頭の中の財宝箱をひっくり返しているらしい。ぶつぶつと呟いていたパイレーツマンは、はたとマジックマンを振り返り、真面目な顔できっぱり言った。

「少し時間をくれ。必ず俺の方がいいと言わせてやる」

 ふ、と呼気の抜けた音がして、マジックマンが俯くように首を傾ける。そのままふるふると震え、やがて激しくなった震えにパイレーツマンが肩を掴めば、耐えきれぬとばかり首を反らせたマジックマンは、大声で笑い出す。
 はははは、てらいなく広がる笑い声の軽やかさにムッとしながらパイレーツマンは肩をがたがたと揺さぶった。笑い声は更に増し、マジックマンは空の掌でバシバシとパイレーツマンの腕を叩く。
「なにがおかしい!」
「なにが、って、」
 笑いを堪えようとして、グフ、と下卑た声が漏れたのがおかしいのか、さらにヒクヒクと肩を揺らしてマジックマンは笑い転げている。こうなってしまうと何もかもが可笑しいらしく、まるで会話が出来る状態ではなかった。
「いい加減にしろ」
 苛々として側頭部を乱暴に叩けば、ようやく笑いの波を抑えつつあるマジックマンは、それでも含み笑いながら、だって、と言った。
「口説いてるつもりですかパイレーツ」
 傑作だ、と零したマジックマンから手を離せば、ひっくり返るようにして床に崩れたマジックマンが、それでもまだ笑っていることに呆れ、とうとうパイレーツマンは稀少石を奪い取るのを諦めた。



 モルダバイトが枯渇して~云々はフィクションで。
 実際はどの位なんだろう…検索してみたら6カラットくらいで3万とかみかけたから、多分掌大のペリドットの方が高いんじゃないかな。まあその辺は未来だし。鉱石価値も変動しているということでひとつ。
 ああでも宝石画像とかみてるときれいでたのしい。

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2009/12/03 小説 Trackback(0) Comment(0)

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