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なんだかいろいろお話ししたいお伝えしたいことがあったのだけれども、
恥ずかしいことがあったり、つかれたことがあったり、ぐるぐるからころしたせいで、ちょっと出てこない。
だから覚えていることだけ。
BRA○MANって日本人だったんだね…!
やーしらなんだ。
わー結構ロキノン出てた筈なんですけど、そういえば毎度スルーしてましたもんで、今日聞いてびっくりしました。にほんごじゃん!
そういうテンションで久々にクイフラなど。
ちょっと冗長になりすぎたのであちこち削った所為で、変なところありましたらごめんなさい(直しなさい)
拍手をいつもありがとうございます!
心持ちだるい気のする機体をゆっくり動かし、フラッシュマンは深く口から排気を促した。
溜息めいてしまうのは仕方がない。ここ三日程、海域警備システムの見直しのために、ラボの一つに詰めていたのだ。
四六時中モニタに貼り付き、システム改善にあたってバブルマン配下の調査結果を元に検討、試験、結果計算、考察を繰り返し、ようやく全てをまとめ終えたところ。あとはコレをワイリー博士とバブルマンに渡して、ひとまず、フラッシュマンの仕事は完了する。
スリープモードに移行していないというだけで、エネルギー補給はきちんと行っているし、節電モードでほぼ動かずにモニタとにらめっこしていただけだが、やはり疲労は隠せなかった。
疲労を感じながらも、データを届けに行かねばなあと考えていたフラッシュマンは、廊下を移動する足音を聞き止めて、半身振り返った。それとほぼ同時に部屋のドアが左右にスライドし、赤い機体が脚を踏み入れる。
「いるか?」
相変わらず、何の意味も成さない問いをフラッシュマンを見ながら投げかけ、クイックマンはドアをくぐりながら内側の壁をなおざりに叩いた。
「…ノックは部屋に入る前にしやがってください」
実のところ、ノックをするようになっただけ、随分と進歩したものだ。
部下に対するときでも、弟たちに対するときでも、あるいはクラッシュマンと離すときでも、基本的にフラッシュマンは褒めて伸ばす方針だ。しかし、この兄相手にそれをしたことがない。
「すまん忘れてた」
何故だろう、などと益体もない事を考えるフラッシュマンには頓着せず、クイックマンは悪びれる素振りも見せずにいけしゃあしゃあと宣った。
「覚えたことあんのか」
「ないかもな」
言うだけ無駄だと知りながら、いちいち教えるだけフラッシュマンは粘り強い。大変な忍耐力と辛抱でもって、この下らない遣り取りを繰り返している。
本当のことを言えば、まるで手応えのない遣り取りは、フラッシュマンにささやかなストレスを与えていた。目くじらを立てる程ではないが、着実にダメージは蓄積される類の、それも、ざらざらと小さな不快感が底に積もるようなストレスだ。
そしてその小さな負荷も、今は大変に重たい。
「頼むから覚えてくれよおにいさま。…何」
疲労から増える熱が、内にこもるのを逃がすため、大きく排気する。
「何の用だ」
スリープモードに移らないとなんとなくだるい、というのは、連続稼働で機体熱が僅かに上がっているせいだ。そのだるさから、フラッシュマンはぐるり、と頭を回し、ついでに肩を動かした。
「なんだ」
「なんだじゃねーよ。こっちがなんだだわ」
肩をぐるぐると回すフラッシュマンを、物珍しげに見ていたクイックマンが、きょとんとした表情で呟いたのを拾い、フラッシュマンは顔を顰めた。
「何か用があったんだろうが。言っておくけど俺は忙しいからな」
「忙しい?」
訝る仕草でクイックマンが尋ねるのを、フラッシュマンは疲労の溜まった頭で見た。
切れ長の目蓋がくっきりと瞬きをすると、ピンと水の跳ねるような音が聞こえることがある。瞬きのスピードによるものか力の加減か、あるいは目蓋の調節のせいか分からないが、フラッシュマンが瞬きをしてもそんな音はしない。
きれいなもんだ。
ぼんやりとクイックマンの顔を眺めていたフラッシュマンは、重ねて響いたクイックマンの問いに対する反応が一瞬遅れた。
「終わったんじゃないのか?」
「……お仕事を届けるまでがお仕事です、っていうか。何で知ってンの」
「博士から配達役を仰せつかった」
「ああ、ああなんだ。届けてくれんのか」
じゃあよろしく、と調査資料を渡したフラッシュマンは、クイックマンがそれを受け取ってから部屋を出て行こうとしないことに首を傾げた。
「なんだよ」
「メタルに組み手教わったんだってな」
ぎくりとした。
疲れている。流石に疲れている。
七十一時間連続稼働、つまり丸三日フル稼働で完徹明けだ。一般活動に対するエネルギー残量に問題はないが、本当に疲れているのだ。勘弁して頂きたい。
「ええと、まあ、」
答えながらも、既にフラッシュマンの足は逃げを打っている。機動力で勝つのは絶望的だが、疲労の溜まった体でタイムストッパーなど、暴走上等も良いところだ。
フラッシュマンの丸三日の成果を掌で弄んでいたクイックマンは、じわじわと後ずさるフラッシュマンを見て、からりと笑った。
「成果を見てやろうか」
涼しげな声で宣う。
じりじりと壁の方へ移動するフラッシュマンの行く手を遮るまでもなく、クイックマンは強引にラリアットをかけると、そのままフラッシュマンの首をホールドした。
「何を教わった?」
「締まる、はな、……い、やいやだ、いやだあんたとは絶対やらねえ!!」
ずるずると後ろへ引き摺られる格好になったフラッシュマンは大いに慌てた。
首の重要管を変に絞めてくる腕を引きはがそうと躍起になるが、このぶっとい訳でもない腕が不思議なことに外れない。嫌だ離せふざけるなと騒いでみるものの、爽やかに真顔で笑う兄は、フラッシュマンから腕を離す様子はなかった。
「いやだって、言ってん、……だろ、が、」
疲れているのだ。
泣いて癇癪を起こすなどしない。人間の子供ではあるまいし。
しかし、可能ならばフラッシュマンはそれを実行したかった。稼働時間オーバーで、あちこちおかしかったのかもしれないが、ひどく魅力的な選択肢だったことは確かだ。
「はな、……ぐ」
段々と抵抗するのも面倒になって、クイックマンが締めるに任せ、動力の出力を下げる。力なく、だらりとクイックマンにもたれかかる形になるが、もう構わなかった。
「なんだ」
クイックマンの声が聴覚器に届いて、フラッシュマンは尚更自分が捨て鉢な気持ちになるのが分かった。どうしたらこの兄は人の話を聞くだろうかと考え、無理かも知れないと思うと気が滅入る。
今までだって、クイックマンがフラッシュマンの言い分を聞いたことはないのだ。
もう少し対話をしたいと思うのは、己ばかりかと思えばどうしようもなく腹が立つ。フラッシュマンは不意に足に力を込めた。己の首に絡んだ手首と肘を掴めば、一度力を抜いたのが良かったのか、少し拘束の弛んだ腕は簡単につかみ取ることが出来た。
「お」
「……ッぅらあ!」
そのまま背負い投げの要領で、背後の体を前方向に担ぎ上げれば、体勢が良くなかったか、体幹が崩れていたか崩されたか、投げ飛ばす前に中途半端な位置でフラッシュマンはくずおれた。放物線の頂点で、投げ放たれずにフラッシュマンの背中に乗ったままだったクイックマンに半ば押しつぶされたと言ってもいい。
「はは」
クイックマンは投げ飛ばされたゆえの自由落下でなく、自分の意思でフラッシュマンの背中を前側へ転がるように降りて着地する。思わず、といった体で零れた軽やかな笑い声を聞きながら、フラッシュマンは己の無様さに頭を抱えた。
「ああもうやだ。ほんとやだ」
そのまま床で俯せたまま、フラッシュマンはぐずぐずと呟く。己の不甲斐なさにきまりが悪くて顔が上げられなかった。
もうこのまま寝てしまおうかと半ば拗ねたように考えていると、腹部と床の間にクイックマンのつま先がねじ込まれる。余りのことにフリーズしていると、つま先をジャッキ代わりに使ってフラッシュマンの体を少し浮かせたクイックマンは、そこから腕を差し込んでフラッシュマンの体を持ち上げた。
フラッシュマンが、その資材か何かでも持ち上げるような気安い手つきに呆然としている間に、クイックマンは個室備え付けのチャージポッドへフラッシュマンを放り込む。ガリ、と肩の装甲を擦るような衝撃があったが、クイックマンの知ったことではないのか、妙に上機嫌だ。そのまま、ポッド外にはみ出た足を適当に詰め込まれ、クイックマンが電磁フィールドを展開させようとしたところで、フラッシュマンはようやく、おい、と唸った。
どんな顔をしていたかは分からないが、睨み付けるには眼差しの力が弱すぎて、どうしようもなく途方に暮れた顔をしていただろう。
「チャージが済んだらトレーニングしてやるから、寝ろ」
上出来だとでも言いたげに微笑んだ、その顔に一瞬フラッシュは見とれた。いい加減兄の顔の良さについては、見慣れた感もあったのだが、クイックマンの真顔でない笑顔は初めて見た。
驚きで反応を返せないで居るうちに、ポッドのカバーが動き、急激に睡魔がフラッシュマンを襲う。
「てめえが言うかよ。…ていうかしねえよ」
展開済みの電磁フィールドの影響で、フラッシュマンの言葉がクイックマンに届くことはなく、
「楽しみだな」
また、クイックマンの言葉がフラッシュマンに届くこともなかった。
たぶん一度本気で戦りあわないと会話が成立しない気がするクイックとフラッシュ。
2009/11/27 小説 Trackback() Comment(0)
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