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微妙に寝そびれたので、ちょっと更新。
以前に書いた海賊と地面話の、はしょった冒頭部分を投げ込みリサイクル。
続きは王様と海賊です。
大概一つのものを書くに当たって、削り取る部分が多いのですが(長いとか、話がそれるとかの理由で)、そういうのがあほみたいにあるので、使ったのか使ってないのか忘れる…
これ、前に出してたよ、というのがあったらそっと教えて頂けると幸いです…。
そっと引っ込めておきますので…
「ご苦労だがグランドと組んで向かってほしい」
テーブルモニタに示される目的地周辺のデータを眺めてから、パイレーツマンはひとつ腹の内で舌打ちをした。モニタに記されたのは、だだっ広い太平洋上にぼそぼそと散らばった点のうちの一つ、南半球の小さな島で、データによれば無人島、とのことだ。
「…それは俺ひとりじゃ駄目ですかね」
ゆっくりと視線をキングへ映し、パイレーツマンは尋ねた。
声に滲む不満を隠すつもりは、そもそもなかったが、それにしても不機嫌な声だった。組まされる相手が誰であれ、こんな小さな島へ行くのにKGNのロボットが二機も連れ立っていくのは、いかにも馬鹿馬鹿しく感じられたのだ。
ごく小さな、島である。
島のデータ上の面積と地図上の点を比べると、周辺海域をモニタに映す尺度では、比率的に大きすぎる感がある。小さすぎて記載できないサイズの島を便宜上記している――それくらい小さいのかと考えて、パイレーツマンはやる気が萎むのを感じた。
こんな小さな島にはなんの面白味もなさそうだ。キングの返答を待つ間に意見を変えたパイレーツマンは、或いはと続けて口に出す。
「奴だけで行くとか」
キングの言葉は依頼ではなく、純然たる命令である。その命令に対する口答えに相違ないパイレーツマンの応えに対し、しかしキングは口元に鷹揚な笑みを浮かべた。
「海底火山が隆起して出来た島でな、小さいが」
パイレーツマンの提案には答えず、キングはモニタを島の断面図に切り替える。
「下に長い」
真横から見た島は、いびつな形をしていた。海面から顔を出しているのは天辺のほんの一部で、残りは殆ど海へ隠れている。地上と海底をつなぐ中間部は細く抉れ、早晩折れてしまいそうに見えた。海底火山が隆起したと言うよりは、山の頂上だけが辛うじて露出しているという表現の方が妥当だろう。
「この下側に用がある」
細く抉れた幹の少し上を指して、キングは二十年前には陸地だった部分だと説明した。
ならば、益々グランドマン一機で用が足りると主張しかけて、パイレーツマンは口を噤む。
「周囲の海流は些か厄介だが、お前なら容易いだろう」
「俺はあの引きこもりの足ですか」
忌々しげにグランドマンを称して、不服面をそのままにパイレーツマンはキングを見た。それは彼らの上司と部下という立場を取っても、或いは造物主と作品、親と子という関係のどれに当てはめてみても、不遜きわまりないものであると同時に、妙に甘えた物言いであった。
「グランドのお守りが不服で拗ねてるのか」
声を荒げることなく、キングは穏やかに笑う。穏やかなくせ、酷薄な笑い方は、彼に実に似合う。
金色の首領の問いは、猛獣が喉を鳴らすようだ。
「拗ねているわけではありません。砂遊びに付き合うのは気が進まないだけですよ」
「そうだったかね」
パイレーツマンは反らさず、キングの視線を暫し受けた。穏やかに凪いだ、仄暗いともしびは夜の海底を連想させ、その証拠にひどく剣呑な色を孕んでいる。
「雲助なぞはごめんですが」
正面からかち合った視線はそのままに、パイレーツマンは強い口調で応え、もとよりへの字に結ばれた口を引き締めた。
「俺が貴方の役に立たなかったことは無いでしょう」
「頼もしいね」
「せいぜい役不足であったという言葉を楽しみにしてますよ」
2010/05/18 小説 Trackback() Comment(0)
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