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2018/06/18

リリ4


9/19はクイックの日ですね。
もうすこし甘いクイックも書かないと。

ひとまずこの話はあとフラッシュのターンを書いたらお終いです。
一番最初とフラッシュのターンを書きたかっただけの説明部分がやたら伸びてしまった。
達成感の無い話であいすみません。
もう少ししたら整頓しよう。

ぽちぽちくださっていつもありがとうございます。


4

「…このくらいにしとけ」
 呆れ返った様子で、エアーマンは赤い弟を制した。
 完全に意識をシャットダウンしたフラッシュマンは、だらりと四肢を力なく伸ばし、ぴくりとも動かない。
「もう落ちてる」
「だらしがない」
「お前に付き合ってればな。今日は終わりだ」
 不満げな視線で睨みつけたクイックマンには取り合わず、エアーマンは米俵よろしく青い弟を小脇に抱えあげた。
「なあ」
「ん?」
「いつものガセなのか、俺を倒したってのは」
「いつもじゃないだろう」
「十回のうち八回ガセはいつもで――おい、横取りはやめてくれ」
「こいつは」
 睨むクイックマンを気にした様子もなく、エアーマンはぐだりと伸びたフラッシュマンを軽く揺すってみせる。
「随分お前に懐いていてな」
「は?」
 どこがだと問えば、エアーマンは馬鹿にしたように胴体のファンをからからと回し、ゆっくりと歩き出した。話の途中で訓練施設を出て行く動きに、何となく後へ続けば、クイックマンをちらりとだけ見て、エアーマンの足はリペアルームへ向かう。
「親切で面倒見がよくて、優しくて教え上手の励まし上手だそうだ」
「誰だって?」
「話を聞く限りじゃ、お前だとは思えないんだがなあ」
 何とも言えない様子で肩を揺すったのは、どうやら肩を竦めたつもりであるようだった。
「…人違いだろ?」
「…なあ?」
 仏頂面が目だけでうっすらと笑い、リペアルームのドアを潜ると、エアーマンはリペア台にフラッシュマンを横たえた。
「メタルもバブルも、詳しいことは知らないとよ。…あんた何か知ってるんだろ」
 リペア作業の準備をするエアーマンを眺めて言えば、こちらを見もせずにエアーマンはさあなアと答えた。壁際に背中を落ち着けて、青い機体が青い機体を直すのを見るのは見慣れぬ光景で、クイックマンはどうにも落ちつかない。
「…派手にやりゃァがって、時間がかかるぞ」
「見てる」
「ニセモノか?」
「かもな」

 あれから何度か、嫌がるフラッシュマンを訓練施設に引きずり込んだ。施設に連れて行く前に五回に一回は逃げられており、施設に連れて行っても三回に一回、やはり逃亡された。
 残りの半分は全て、クイックマンの気の済むまで、確認作業と称する訓練が一方的に行われたが、確認はまだ終わっていない。
 今のところ、「クイックマンの気の済む」まで、訓練が敢行されたことが無いのだ。途中でフラッシュマンが限界を超え、今日のようにシャットダウンしてしまうせいだった。
 そうやって訓練施設で追いかけ回していて気付いたことだが、フラッシュマンはやはり特殊な動きをする。
 純戦闘型の割に、単純戦闘力がクイックマンと開きすぎているのは事実だ。
 腕力や破壊力といった直接の攻撃に繋がる能力はことごとく恐るるに足らず、投擲・射撃精度や反応速度と移動速度、機体制御等の運動機能に関しても、ずば抜けた面は見られない。戦闘能力のみを判断するなら、そんじょそこらの量産機ほどお粗末でないのは確かだが、陸上のバブルマン並には鈍くさい。バスターは当たらないし、反射速度は遅く、速く走れないし高く飛べない。
 しかし、クイックマンの攻撃を、紙一重で――避けるまでには至らないものの――、器用にぎりぎり致命傷を逸らしてみせる。その予測行動と確率計算は舌を巻く正確さだった。
 回避能力や逃亡への意欲はA+だ。ブーメランを投げても投げても、クイックマンの狙い通りに、フラッシュマンの機体に当たったことは一度もなかった。
 出来る限り攻撃を仕掛けず、逃げることばかりに気力を費やすフラッシュマンには、少々物足りない思いもしたが、変な動きはクイックマンには格好のおもちゃだったこともあり、追いかけ回してはダウンに追い込んだ。
 クイックマンは、なにをどうしてフラッシュマンが自分に勝ったのかを知りたかった。
 それはタイムストッパーという唯一無二の固有武器によるものだ、とドクターワイリーは説明してくれたが、そればかりでもあるまい、とクイックマンは踏んでいる。
 暴走がどうとかとフラッシュマンは言いかけ、結局口を割らない。青い弟は亀になり貝になり、ひたすら何かを隠して逃げ回っているようだ。
 あれは何かを隠しているのだ。


 リペア作業を終えたエアーマンは、直した傍から壊すなよと言い置いて部屋を出て行った。省エネと称して室内灯を切られてしまったが、大した問題があるわけでもなく、クイックマンは壁に凭れたまま、フラッシュマンの方へアイセンサーを向けた。
 リペア台に横たわる青い弟機は、スリープモードでチャージを行っている。落ち着いた制動音は僅かで、リペアルームの他の機材の音に、大半はかき消されてしまう。
 そうやってただ横たわっている様子は、唯一クイックマンに覚えがある、フラッシュマンの様子と合致した。もっとも、制作途中の彼は、両腕のない状態で、頭部も半分程途中ではあったが。
 どれほど眺めていたのか、不意にチチ、とチャージ完了を告げる控えめなアラームが鳴り、俄に回転数を上げたフラッシュマンの機体が、ゆっくりと起きあがった。
 リペア台の上で起きあがった青い機体が、正面からアイセンサーを流れ半円を滑り、クイックマンのいる壁際へ向けられる。暗闇の中を真っ直ぐに向いたグリーンのセンサーは、さぞかしレーザーの如く弟を射抜いただろう。それには頓着せず、クイックマンはフラッシュマンを見つめる。
「ほんとは」
 暗闇で、ぽつりとこちらを向くアイセンサーが星のようだった。
「あんた、俺をサンドバッグにすりゃいいよ」
 起きしなに物騒なことを言うフラッシュマンに面食らって、クイックマンは二度続けて瞬きをした。
「無抵抗をいたぶるのは好みじゃない」
「最近の散々はなんだってんだよ、うそつき」
 失礼な奴だ。お前はちゃんと抵抗をしていただろうと言い募りかけ、クイックマンは眉間に力を込めた。訝るように、答え合わせをするように問う。それはクイックマンとしては、甚だ不本意な問いではあるのだが。
「…おまえ、俺が壊れたのがまだ気になってるのか」
 フラッシュマンは視線をクイックマンに留めたまま、身じろがない代わりに、ぎしりと関節をきしませた。それをクイックマンは肯定と取る。
 壁から背中を離した。ゆっくりとメンテナンス台までを歩いて近づく。その一挙手一投足に、フラッシュマンが注意を払っているのが分かる。
 動揺のあまりにだとしても、お粗末に過ぎる。動向がバレバレ過ぎて二流以下だとクイックマンは点を付け、しかし、全くのポーカーフェイスであれば、それはそれで腹に据えかねるだろう予感もあった。
「そうなのか」
 ベッドサイドで念を押すクイックマンに、フラッシュマンはばちりと大きく瞬きをしたきり、うんともいやとも答えない。
「戦闘型が、壊すのにびびってどうする」
 クイックマンはほとんど腹立たしい気持ちでいっぱいだったが、腹を渦巻くマグマは、なんとか口から溢れてくる前で押さえられていた。
 フラッシュマンの寝るメンテナンス台に腰掛けると、おもしろいくらいフラッシュマンがびくついた。尻で飛びあがったのではないかと思いながら、言及するのは止める。
「おい、何もしやしない」
 びくつくんじゃねえと睨んだクイックマンの眼光を受けて、フラッシュマンが微かに喉を鳴らした。先程から瞬きを一度もしていないアイカメラの表面が室内の薄明かりを反射する。
 呪われたように動かないフラッシュマンの前で、クイックマンはおもむろに、己の胸部装甲に手をかけた。
「なに、」
「黙ってろ」
 ばちんばちんと音を立て、雑な手つきで、幾重にも囲まれた装甲を解除する。迫り出した赤い装甲を解除し、直下の脇腹から開くように内部装甲を露出させた。
 乾いたフラッシュマンのアイカメラの前に、銀色のピンを突きつける。先端に凹凸のついた、やや歪な円柱状のピンは、外部装甲の下、重要内部機器を守るための内部装甲を外す鍵だ。
 胸郭に守られた、その薄い金属の一枚向こうはコアパーツだというところまで開けば、狼狽えたフラッシュマンの顔が凍り付く。
 しかしそのまま、フラッシュマンの手の届く範囲まで近寄って、クイックマンは鍵を差し込んだ。手応えも何もなく、するりとはめ込められた鍵を開き、機体の最も弱い部分を晒してみせる。
 駆動雑音が僅かに大きくなり、フラッシュマンのアイセンサーがびりりとわなないた。
 なんて無防備な。それはクイックマンも承知している。
「ここの」
 思いながら、動力炉から伸びる重要管を指し示す。
「ここのパイプが歪んでねじ切れる寸前だったらしい。こればかりは、運が良かったと博士が言ってた」
「…おい」
「外装甲は割と綺麗だったってな。内部だけ捻れるみたいに、特に駆動制御が歪んでたって聞いてる」
「おい、しまえよ」
 メンテナンス台から落ちそうなほど端に寄って、フラッシュマンは力無く頭を振った。堅く口を結び、身構えるようにクイックマンを見る。再起動からこの方、ずっと見続けているフラッシュマンがクイックマンを見るときの顔だ。
 何がそんなに恐ろしいのだか、クイックマンには全く分からない。
「ちゃんと見ろ」
 黄色がかったグリーンのアイセンサーが不安定に明滅する。セラミックの歯が食い縛られて擦り合わされ、キシキシと音を立てた。
 どうにもこの新しい弟機は臆病者で、酷くクイックマンが恐ろしいようだった。
 ただクイックマンに対してのみ作用する毒が怖くて、一度殺してしまった兄が怖くて、もう一度動いている自分の知らない兄が怖くて、訓練が怖くて痛みが怖くて、怖いことが恐ろしくて、もうなにもかもが恐ろしくて堪らないのだという顔で、クイックマンを見る。
 クイックマンにもその正体は分からないが、恐らくフラッシュマン自体にも分かっていないのだろう。恐ろしいことが恐ろしい、そうして弟はクイックマンに呪われて、完全に拒絶することも出来ずに怯懦に震えるのだ。
 無様だ。それでも戦闘型のはしくれか。
 そう、思わないでもない。
 時間に執着する弟機が恐れるものを、クイックマンは共有することは出来ない。
 はしるために、クイックマンが過ぎたものを振り返ることなど無いからだ。
「ちゃんと見ろ、――直ってるだろ」
 逸らされはしないものの、クイックマンの顔から視線が動かない。溜息めいて排気をひとつ、クイックマンは手を伸ばして、凍り付いたフラッシュマンの顎から頬を軽く撫でた。
 頼りなく柔らかい頬をそれて、正面から額をわしづかみ、己の胸部へと視線を促す。
「…コア外殻に傷がある…」
「そりゃ昔っからだ」
 おまえのやった奴じゃないと言っても、どこか気にする素振りを見せるので、クイックマンは触るかと聞いた。
 フラッシュマンがアイセンサーを、ぎょっという仕草で見開いて、え、と言ったきり固まった。そこまで驚かれる意味がわからなくてじろりと視線を強めに見ると、フラッシュマンは慌てて「いいのか」と聞いた。
「ああ、触りたいんだろ」
 どうぞ、両の掌を肩まで上げて無抵抗を示すと、尚もフラッシュマンは躊躇っていたが、もう一度チラとクイックマンを窺って、そろりと手を伸ばした。
 恐る恐る伸びた手が、触るかどうかを迷いながら、そっと傷に触れる。その慎重な様子は、クイックマンには焦れったくて関節にむずむずと微細な不具合を生じさせる。
 フラッシュマンの言う傷は、コアの外殻に残る痕である。
 元より、痛覚の通わせてある箇所ではないし、重要部といっても、表面を覆うこれ一枚が死んだところで、即座に動作不能に陥るような箇所ではない。だいたい、傷と言うのも大袈裟なもので、単なる作成時の疵にすぎないものだ。
 それを、さも大事そうに触れたフラッシュマンが、憑き物の落ちたような顔でクイックマンを見る。
「…あんた、直ってんの、な」
 今更のように吐き出された言葉は、ひどく安堵に満ちたものだった。そして、それと同じ程の強さで、グリーンランプが縋りつく。何かを乞う視線が何を意味するのか、問う代わりにフラッシュマン、名前を呼び掛けて思いとどまる。
「フラッシュ」
 呼びかけてみると、びくり、と、アイセンサーが揺らいで明滅した。
「フラッシュ」
「な、に」
 感情の変化が細やかで、機械のくせにポーカーフェイスが下手だ。指揮官がそんなでは部下に動揺を与える、毅然としろと思う傍ら、クイックマンは、ふつふつとコア挙動のノイズを自覚する。静かに煮える、あのノイズだ。
「あんた俺に恨み言をなんか言えよ」
 クイックマンに縋り付く視線が、目元をひくつかせる。必至な形相は、なんと繊細な挙動だと感心もさせられるが、全体的にバランスが崩れて不細工この上なかった。
「直ってる」
 指を端から一本ずつ折り曲げてから開き、腕を回してから組んだ。問題ないと動かして見せ、クイックマンは、足の先でコツンとフラッシュマンの膝を軽く蹴った。
「戻らないもんは、仕方がねえだろう」
 クイックマンの言葉に弾かれたように、フラッシュマンの金壷型の、大きなめだまが限界まで開かれた。クイックマンを食い入るように見つめるカメラの縁が不思議な程歪んだ顔で、間の抜けた顔だとクイックマンは思った。
「フラッシュ」
 名前を呼ぶ。馴染みのある響きというにはまだ角があり、見知らぬ名だと言うほどの硬さはない。
 何も怖くないのだと言ってやるには、コアを騒がすノイズが喧しすぎた。

 

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2010/09/19 小説 Trackback(0) Comment(0)

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