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バナマジ強化けいぞくちゅう。
全年齢的なばなまじ。
マジックは笑う。よく笑う。
目だけしか見えねえが、同じように目だけしか見えねえコールドよりはっきりと、顔全部が見えるグランドより分かりやすく、マジックは笑う。うっそりと、うさんくさく、正確に、わらう。
職業柄だろうとパイレーツは言う。
厭味な笑いだと言いながら、ひっくい鼻を鳴らして笑って、クツクツと喉を鳴らす。あちこち鳴って楽器みてえな野郎だ。押してやりゃぎゅうと鳴るかもしらん。
いやみだってのがどんなもんかと思うが、いやなもんだというのは、そうだ。
嫌いだってわけじゃあねえ、が、マジックの笑い方はいやなもんだ。
「標準状態なんですよねえ」
どうと言われてもねえ、マジックは気のない感じで答える。ちらり、と一回だけ俺をみて、マジックはうすい、うすーい笑いを浮かべた。
「営業用とかいうやつだろ」
「おや」
ふ。と、口があれば端をぐいと持ち上げてた筈のソレは、パイレーツ曰くの「いやみな」笑い方ってやつではない。おあいそ、とかいうやつでなくて、マジックが良くやるやつのもうひとつだ。
「よく知ってましたね」
口も鼻も見えないマジックの、目が半分がたに細められて、斜め下の方にアイセンサーが流れる、余裕しゃくしゃくの笑い方だ。コレを見ると、ガス管の継ぎ目がぐすぐすする。
マジックは俺の事をばかだばかだと散々言うが、マジックも大概ばかだ。多分ありゃ俺が馬鹿にされてることに気付いてねえとか思ってるのかもしれない。んなわけあるか。まったくいやなもんだ。
「どこでどう笑おうとねえ、いやなら見なきゃいいんですよ」
目を細めたマジックは、くすくすと小さな音を立てて笑う。どこから音がしてるのか分からねえ音で笑う。半目で――ながしめとかいうんだったか――、触るような、撫でるような視線は、俺はマジックに腹をむかついてるんだってのに、それとは関係無く、何だかふらふらと誘われたい感じがする。
ぐらぐらと電脳を揺さぶられる感じに浸ってると、いつの間にかマジックがガラス玉をコロコロと手の中に転がしていた。俺が手を見たことに気付いてか、ひとつからふたつ、みっつにガラス玉が増える。ガラス玉が、マジックの、細長い指の間を行ったり来たり、それ自体が滑るようにつらつらと移動をする。
割れねえってのもともかく、音らしい音もしないのがよくわからない。数デシベル程度のチリチリという細い音が拾えるくらいで、ありゃあどうやってんだ。移動させるやり方は見てりゃあ分かるが、分かるからって言ったって、どうやってガラスなんていう磁石でくっつくわけでもねえ、強くぶつけたら割れる、ちょっとぶつけても音のするものを、するすると動かしてるのか、まったくさっぱりだ。
見るたびあれこれと気になるが、考えたところで分からねえし、分かったからってどうしようもねえ。
気になることが多すぎてもうわけわからん。きもちがわるい。
吐き出す余計なものなど腹には何も詰まってねえが、きっとそれはガスが逆流するようなむかつき加減だろうと思う。きもちがわるい、とマジックを睨んでいると、いつの間にかてのひらのガラス玉は、三つから互い違いに入れ変わって、二つを隠して一個に減った。
アレ、でもさっきと大きさが違う。じゃあ隠れたのは三つかも知れない、でも俺にはもうわかんねえ。
ああでもこれは、もの凄くマジックみたいだ。
こうやって、なんだか良くわかんねえうちに誤魔化して、隠して別のものを見せているのだ。マジックというやつは、そういうやつだ。優しげなうさんくせえ笑いを浮かべて、腹の内側を絶対に見せたりしない。多分それは、パイレーツもびっくりするくらいに黒々と煤けているはずだ、絶対ェそうだ、でも見せないから何だか白いような気がする。ぐるぐるする。ひきょうなやつだ。
「そんな虫眼鏡みたいに見て、」
もう見てネエよと言おうとして、顔を上げたら何も言えなくなった。
「あなたコレ好きですねえ」
はは、呆れたような、妙な顔で言ったマジックが、いつもと少し違う、隙の無いアレと違う、殆ど線のように細くなった目でへろりと笑った。ので。
笑顔、というジャンルでなら、多分、いつもの方が上等なやつだ。
これはちがう、あれだ、崩れた感じだとか、だらしねえとか、だれた感じの顔で、パイレーツあたりなら不細工になってるくらいのことは言いそうな。
これは見たことがねえやつだと、思った途端、急激に体幹から火を噴くかと思った。ほんとだか気のせいだか、ボディが高熱を帯びる気がした。焦がすと思って、慌てて立ち上がった。テーブルに膝をぶつけたので積んであったトランプが崩れた。だがそんなの知るか。そんなのどうでもいいだろ。
とにかく火を噴きそうだ、ああまったくなんだかどうもよくわからねえ。
*****
妙なところで真面目なバーナーは男型とやったことがないので、マジックにえろさを感じてるのが性的衝動だと気付かずにしばらくもやもやしているとかだったらどうだろう、とか思った。
2010/11/02 小説 Trackback() Comment(0)
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