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2018/06/18

リリ5

寝るまでが12/14です。言い張る。わーいクイフラの日!

忘れてなかったんだねと言う感じでフラッシュのターンです

12/14なのに祝う気はあるのかという薄ら暗さ。あるよ!すきだよ!
これはクラフラではないのかというクイックの不在ぶり。ちがうよ!クイフラ(未満)だよ!

これでフラッシュターンは補足分なので、これで大体終わりでございます。
長々とおつきあいありがとうございました。
さーここを底に幸せに向かって歩き出したい。クイフラ甘いの全然書いてないですからねー


5

 肩を揺すられるような小さな衝撃を感じて、短いスリープモードに落ちていた意識が平常モードへ復帰し、フラッシュマンはハッと目を覚ました。三十分ほど意識が飛んでいたようだ。
 スリープモード時、バックヤードで稼働初期のデータを参照していたのか、微かなデータの残滓が残っていた。人間で言う「夢を見た」ような状態に、すこしばかり動揺する。
 夢の続きを覚えている。
 あのあとはひどい目にあったのだ。
 稼働一時間でクイックマンに受けた体術指導は、一般機なら耐久年数を減らしかねないレベルのものだった。もともとクイックマンの「力加減」はクラッシュマンとよりマシという程度だ。歩くのも覚束ないフラッシュマンには、当然ハードにすぎたが、フラッシュマンは根を上げずにしぶとく食い下がった。
 それをクイックマンは向いていると言い、見込みがあると言って愉快そうに笑った。
 今なら、あれはただ、痛みをよく分かっていなかった為だとフラッシュマンは分かっている。
 痛いだとかつらいだとか疲れているとか、そんなことよりも、あらゆる刺激を覚えるのに夢中だった。楽しくて仕方がなかったのだ。
 限界が分からず動いた結果、突然エネルギー切れでシャットダウンしたフラッシュマンは、結局ドクターワイリーの心配通り、リペアルーム送りとなってしまったのだが。
 何も知らない初期だからこそ、敢行し得た蛮行だとフラッシュマンは苦笑いを浮かべた。しかし、どうにもそれは妙に甘く尾を引く苦さで、少し羨ましいような気もするのだった。
 自分で自分をうらやむなど、ナルシスティックに過ぎる。
 けれども、こうして思い出してしまえば、刷り込みの雛のひたむきさで、クイックマンの後をひらすら追う己の無知は、やはり羨ましい、とフラッシュマンは微かに思う。そして同時に、酷く遠いものに感じた。
 おそらく、もう、恐ろしくてクイックマンと訓練など、フラッシュマンには出来ないだろう。
 元々のスペックに頼り切ることなく、持ち得たものを最大限に引き出すために、彼が、兄が微調整に微調整を重ねた機体。
 ハードとソフトのずれをゼロへ、足底の摩滅による差異、ビンディングの締め付け抵抗をミリ単位で、マイクロ単位で、どんな細かい違和感も音速を超え光速に近づく為に、彼が把握する全身状態は、いつも細やかで驚くほど正確だ。
 丹念にすりあわされた制動システム、しなやかに織り上げられたワイリーオリジナルの最強最速、赤い閃光、クイックマン。
 コアが細波を立てる感覚を覚えて、浅く排気を促す。
「フラシュ」
「ああ、…ああ悪ィ、起こしてくれたのか」
 背後に立つすぐ上の兄に気付いて笑みを返すと、クラッシュマンはじっとフラッシュマンを見つめたまま、静かに首を振った。
「…ああ」
 床に落ちている休眠用のブランケットに気づき、フラッシュマンは胸が詰まるような感覚を拾う。誤魔化すようにブランケットを拾い上げ、ありがとうと呟く。
「すまん」
「んなこたねえよ」
 言葉少ないクラッシュマンの視線は、ただ静かに注がれるだけで、恐らくこの所休息を殆ど取っていない弟を心配しているのだと知れた。しかし、今は責められているようで、反らしたくなる。
 実際に目を反らしてしまったら敗けだとフラッシュマンは意地を張り、ただクラッシュマンのアイセンサーの表面を見つめ、ありがとう、ともう一度繰り返す。
「ねろ」
「ダーイジョーブだって」
 かつかつと聴覚器の横を小突いてから、フラッシュマンはのっそりと立ち上がった。
「あと少ししたら短期睡眠取るし」
 ブランケットをそっと椅子の背もたれにかけて、フラッシュマンはクラッシュマンをドアへ促す。心配は有り難かったが、やらなくてはならないことが山のようにあり、まだしばらくは眠るわけにいかなかった。
「フラッシュ」
「またあした、な」
 半ば強引にクラッシュマンを閉め出し、フラッシュマンはドアにロックをかけた。
「おやすみなさい」
 廊下へ静かに声をかける。
 しばらくクラッシュマンは廊下に留まっている気配があったが、やがて自室の方向へ歩き始める音がした。
 申し訳なさと有り難さに、思考が重く乱れていた。言葉よりも視線で物を言うクラッシュマンに、じっと視線を注がれるのは堪える。
 思考のスイッチを切り替える為、フラッシュマンは頭を左右に振った。三十分も寝ていたのなら、十分なチャージには当たらずとも、まだ半日は動けるはずだ。
 クラッシュマンの持ってきたブランケットを膝にかけて、再びコンソールに向かい直す。
 やることは山のようにあるが、時間はあまりない。

 フラッシュマンに与えられた時間は、最初は一週間だった。
 それを二週間にし、一月まで延ばす頃には、説得は殆ど脅迫めいた論調になっていた。
 随分しぶとく食い下がったものだ。
 何をそこまでと面食らった顔の長兄と博士の顔を思い出して、フラッシュマンは些か顔を覆いたくなる。しかし、如何様に滑稽であろうが、恥ずかしがるのは後でいい。今、フラッシュマンにそんな時間はないのだから。
一月以上の延期は許されなかった。
 失われたクイックマンの個人メモリ、それをサルベージして修復する作業に当てられた時間には、一月は十分な時間ではない。
 膨大な量の破損データの中から、修復可能な欠片を探し出して、それを手がかりに復元をかけていく。
 解れた糸を撚り直すのは、もつれた糸をほぐすのとは段違いの労力と忍耐を要した。しかも、それは元通りになるとは限らない。 それでも、フラッシュマンはやめたいとは思わなかった。
 したことの半分が徒労に終わっても――殆ど報われないのだとしても。
 どうしてもと、フラッシュマンは食い下がった。説き伏せるなど、論理的もへったくれもあった物ではない。半ば強迫めいた切迫感から来るフラッシュマンの主張は、殆どは自分に向けて言い聞かせているようなものだった。

***

「再構築って」
 どこからですか、と尋ねた声は平坦だ。
 そんな筈もないのに、血の気が引いたような感覚とは、恐らくこれを言うのだと、ありもしない知覚をフラッシュマンは覚えた。錯覚だ。緊張で表情が強張り、酷い顔をしているのだと言うことは、ワイリーが微かに眉根を止せ、肩をトンと叩いてきたことからも明らかだ。
 ならばいっそ蒼白であれば、憐れにすぎて喜劇になりえたかもしれない。まるで統制の取れないフラッシュマンの感情回路は、混乱して訳の分からぬ皮肉を弾き出す。狼狽えるにも程があった。
「そんな顔をするもんじゃないわい」
 今ばかりは繊細に動く情動回路を恨んだ。フラッシュマンのメンタリティが実に繊細に制御される、このきめ細やかさは、紛れもなくドクターワイリーが天才である証だ。
 しかし、そのぶんだけ、憐れだ。
「いえ、…いいえ。問題ありません。博士、再構築というのは、どこからですか、クイックマンを、初期化すると言うことですか」
 フラッシュマンは酷く動揺しており、感情分野が千々に乱れ、論理回路とは完全に乖離していた。
 揺れる現在の状況を、冷静に、いっそ冷淡にとりわけるのは彼がいかなる状況でも沈着冷静を求められる指揮官型の特性で、フラッシュマンの声は、常の豊かな彩りに乏しい。
 いま、ドクターはなんと言ったのだったか。
「博士」
「まあ初期化まではいかんじゃろうが、…よくて半年か」
 ドクターワイリーは、クイックマンの欠損データは復元不可能だと言ったのだ。
 訓練中に発動したタイムストッパーは、クイックマンに重篤なダメージをもたらした。タイムストッパーの機構とクイックマンの内部回路との組み合わせは致命的に相性が悪く、過負荷のかかったクイックマンは現在全システムをダウンさせられている。下手をすればコアが崩壊してもおかしくなかった。
「…バックアップデータは戦術系統と物性だけですよね、メモリも情動管理はざるだって」
「……まあな。あのバックアップ嫌いめ」
 渋々と応えを返して、ドクターワイリーは溜息をつく。その様子から、フラッシュマンが何を言い出すのか察しをつけているのだろうと知れた。
「メモリの修復とサルベージをさせてください」
「フラッシュ、回復は無理だ」
 非効率を指摘してメタルマンがフラッシュマンを諫めた。
 何日かかっても、まるで回復は見込めないかもしれない、そんな先の見えない作業に時間を割くよりは、一刻もはやい再起動を促した方がいい。
「博士」
「フラッシュ」
「博士、…お願いします、させてください」
「フラッシュもう」
「少しでも!」
 メタルマンは無駄だと言い、ドクターワイリーでさえもその言葉を訂正しようとはしなかった。彼らが無駄だというならば、それは無駄なのだ。
 それでも、これを諦めるわけにはいかない。
 時間の無駄だとメタルが言う意味を承知しながら、フラッシュマンは、これを放ってはおけなかった。
「…少しでいいんです、二日でも三日でも、十秒でもいい」
 兄のことだ。
 顔にはでないが意外と優しい兄のことだ。
 誰だそれはと長兄が真顔で見返し、次兄が少女漫画かと笑った、フラッシュマンの兄のことだ。
 目が覚めた時にいたひとで、歩くのも覚束ない弟を嫌な顔もせずに面倒見てくれた兄だ。容赦なく強いのに赤子同然の自分に付き合って稽古をつけたりする酔狂なやつだ。
 やたらと横暴で我が侭でひとの話は聞かないし、手は早いし足癖は悪いし手加減は下手だし、何度言っても充電ケーブルを引っこ抜いて壊すし直さない。
 理不尽なまでに整った造形をしていて、とりわけ走る背中がきれいだ。
 早く走るには余りにも不適な二足歩行で、誰よりも早く走る。強く輝くアイセンサーがうつくしい。身のこなしが鮮やかだ。
 反則のような反射速度でブーメランをぶんぶか振り回して壁を壊し床を壊し、クラッシュと戦う姿からは目が離せない。言葉を交わさず通じ会う姿は羨ましい。
 土煙の中を、あの赤が、視界を裂いて走っていくのが好きだ。
「俺は少しでも」
 からりと笑う兄を見ていた。
「…取り戻したい」
 その笑う兄を殺した。
 感情を持つなら、機械であっても彼が彼たる核に、感情の記憶は欠くべからざる要素であるはずだ。
 体が無事でも中身がまるごと違うクイックマンはクイックマンか? 少なくとも、フラッシュマンの知るクイックマンでは、ない。
 しかしそれは、フラッシュマンが兄を殺したのか。
 クイックマンの中のフラッシュマンが殺されただけではないのか。置いて行かれたのは。
「無駄かも知れんぞ」
「それでも」
 与えて貰ったものをほんの少しでも、兄の力になることで返そうと思っていた。奪ったままで返せる当てもない。やり遂げる自信などない。
「博士、メタル」
 本当は、これは兄の為にやる作業ではないのだ。
 卑怯な自分は兄が寝ている間に借金を少しでも減らそうと頑張っている、ただそれだけだ。
 あわよくば、たった少しでいいから、自分の知っている兄が戻ってきてくれないかと、ただそれだけ、それこそをしたいだけなのだと。
 ぜんぶみんな知っていて、黙って許してくれているのだ。

 だってこれは、このあがきは、何の役にも立たないものだ。

 一つのことに拘泥して無駄な演算を遂行し続けるなど、ワイリーナンバーズにふさわしくない愚行だ。ロートルと言うより、もはや原始的な計算機のレベルではないか。
 非効率を嫌う長兄が、我が子を案じるドクターワイリーが、揃って「無駄なこと」をフラッシュマンに許してくれたのを、申し訳ないと思う。ありがたいと思う。
 何も言わずに放って置いてくれる兄どもが、無精な弟を案じる兄が、有り難くて頭が上がらない。

***


「フラシュ」
 忙しなくクイックマンがリペアルームを出て行った後、ぼんやりとフラッシュマンは防御壁と一体化したクリアディスプレイを眺めていた。
 何度も何度も繰り返し、最後の一秒まで粘って拾い集めた結果だった。クイックマンが帰ってこなくても、それはもう、分かっていたことだ。織り込み済みだ。承知の上だ。
「フラァ」
 背後から声をかけられて、ディスプレイに反射する機影を確認すれば、居たはずのメタルマンの姿はなく、代わりに直ぐ上の兄が立っていた。
「…ああ、…おかえり」
 口元に辛うじて笑みを昇らせ、振り返ろうとしたところで、背中にガツンと衝撃を受けた。突然のことに慌てるが、クラッシュマンが勢い余ってぶつかっただけと分かって、薄く口元が笑み未満のおぼつかなさで弛む。
「クイック、ァ」
「ん? ああ、早速調整ってさっき」
「ようだァぬかしったが」
 廊下ででも会ったのか、けろりとしたクイックマンを見たとクラッシュマンはおぼつかない言葉で告げた。自分を覚えていたと驚いているのだろうか、フラッシュマンは口元の笑みを更に薄く薄く引き延ばす。
「…げぇんきだったでしょ」
 立ち上がることは止めて、コンソールの上に肘をつく。
 満足なのか不満なのか、悔しいのか良かったのか、昇華しきれぬ相反する情動に圧されて、自然頭が垂れた。俯いたフラッシュマンの視界は床へ注がれる。
「俺が起動した前日くらいまでっぽいのな」
 因果だァね、道化ぶって呟くと、ガツ、と頭部を叩かれた。驚いて頭を上げようにも、力が加わってそれは叶わない。
「ねろ。もう」
 続いてごりごりごりと頭部を削られるような音がした。
「お願いやめて、減る」
 白っぽく粉状に落ちているのが己の頭部でないことを祈りたい。殊更に揶揄めいて痛いなあなどと言えば、クラッシュマンは少しばかり力の調整を変え、肩をごつごつと削ることにしたようだ。その揺すぶられる振動に思い出すことがあって、フラッシュマンはぎゅうと目を瞑った。
「ねろ」
 クラッシュマンがやさしく繰り返すのが、余計に沁みて、喉の奥から、コアの震えが漏れた。

 

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