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2018/09/22

店番の日々 1

【注意】
 ・特殊捏造設定があります
 ・オリロボ的な描写があります
 ・複数のシリーズが混入されています
 ・装甲レスが含まれます

夏コミにて委託して頂いた、同名無料配布本「店番の日々」より
既刊「WORLD CURTAIN」のマジック捏造設定に基づいており、且つネタバレを含んでおります。





 田舎町の片隅、目抜き通りから外れた裏通りの一角に、石造りのアパートメントが並んでいる。
 裏通りは軒並みシャッター通りだ。目につく店と言えば角の薬屋くらいで、他の店舗はたいてい「売り出し中」の紙が貼り付けられている。二階より上の賃貸物件は、三分の一程度にようよう店子が入っているものの、その半分は倉庫という有様では、通りが寂れて人気の無いのも無理はなかった。
 昔はもう少し一通りがあったらしいのだが、十数年前に駅舎が移動して以来、人の流れが変わり、この通りはすっかり「裏通り」になったようだ。
先程拾ったばかりの話を思い出すともなく頭に浮かべながら、埃っぽいコートを纏い、フラッシュマンは石畳の道を歩く。角の薬屋を曲がって通りを上ったところにある、仕事終わりの人間で賑わうバールで聞こえてきた話だ。
 おつかいの振りをして立ち寄ったフラッシュマンが見たのは、給仕を含めて人間だけだった。好奇の目で眺め回されるようなことこそなかったが、この町のロボットは、エネルギー酒を引っかけるほどの日常にはいないらしい。
 高濃度アルコールの名を告げると、給仕は少し悩んだ末に、薬局の方が良いのではないか、と答えたのを幸いに、フラッシュマンは早々に退散してきた。
 入り組んだ路地は細く蛇行していて、不慣れな者が辿り着くには、些か不親切な場所に、フラッシュマンの目的の店があった。否、これから、店になる。目的の空店舗の前に佇む人影を見つけ、フラッシュマンは足を止めた。
 随分と大柄な、と遠くから見た人間は思うだろう。アメリカンフットボールの選手だろうか、と訝ったとしても、無理はない。
 その、やたらと上半身が大きな影が立っているのは、以前は家具屋であった店の前だ。後継者がつかず店を畳んだのも既に数年前の話で、今はがらんどうの箱の前。
 大柄な人影が人目を引くのは、彼の姿が、ということもあるがそれだけではなく、空き店舗に買い手がつくのが、やはりそれなりに珍しいからだった。遠くから、少しだけ物珍しげに、ちらちらと視線を遣る姿をフラッシュマンは幾つか見た。
 遠目から見守る視線たちも、もう数メートル近づけば、店の前に立つ人影が、正確には「人影」ではないことにはっきりと気づくだろう。屈強な大男然とした人影は、なんのことはない、青い亜人間型のロボットだ。
「散歩はどうだった」
 フラッシュマンの方に視線だけを向け、ロボットは無表情に訊ねた。無表情、というよりも、彼にはそもそも顔のパーツが目程度しかないのだ。
 しかし、心情を表すことが出来るパーツは顔だけではない。慣れてみれば、ロボットの表情に無頓着な人間であっても、目配せや排気の強さ、間の取り方などで、彼がひどく豊かに「人を食ったような」諧謔味を見せるロボットだと言うことに気付くだろう。
 同じロボット同士、もっと言えば同じ制作者から作られた兄弟機同士であっても、彼のくせの強さは他機とは一線を画する。くせというか、アクが強いのだ、とフラッシュマンは思う。
「サボってたみたいな言い方すんなよ」
「そうか。サボってないとこ見せてくれ」
 そう言ってちらりとフラッシュマンを見た青い亜人間型ロボット、エアーマンは、揶揄するように、カラカラと胴体のファンを回した。
「おい」
 それを見咎めてフラッシュマンが眦をきつくすると、エアーマンは両腕を肘から軽く持ち上げ、胴体の前で掌を見せた。ホールドアップに似た動作は、肩のないエアーマンが見せる、肩を竦める動作のうちのひとつだとフラッシュマンは知っていた。
「ちゃんと周囲を警戒してる」
「あんた周囲警戒して、ヒトが居たらばれないギリギリのところでそういうのすンだろ」
「そうだな」
「そーゆーことすっからメタルが俺と交代しろとか言ってくんだからな?」
 大きな前掛けがエアーマンの胴体にあるファンを覆い隠しているとはいえ、エアーマンは目立つ機体だ。頭から肩が一体化した特徴的なフォルムは忘れようとも頭に残る。
 昨今では独特の亜人間型デザインが一部で人気を呼び、「エアーマン型」と呼ばれる劣化コピーのような機体が姿を見せるようになった。それも、エアーマンの悪い癖を煽っている一因にフラッシュマンには思えてならない。
 余談だが、方々で見かける「エアーマン型」は、名前こそエアーマンを勝手に冠しているものの、本来の意味でエアーマンの形だった試しがない。少なくとも、フラッシュマンは今のところ出会ったことがなかった。どちらかと言えば、イエローデビル型とでも呼んだ方が良さそうな、質の悪いニセモノデザインも、世間では「エアーマン型」で通るのだから嘆かわしい。
 要するに、頭と肩が一体化した首のない亜人間型を総じて「エアーマン型」と呼ぶようだ。長兄などは随分腹を立てていたようだが、当のエアーマンは「適当なものだな」と妙に面白がる風だった。
 しかし、幾ら街中で働くロボットが増え、似通った亜人間型が台数を増したと言っても、街中をロボットが闊歩して違和感がないのはもっと都心での話だ。牛の歩くような田舎ではないにせよ、そもそも人口自体が少ないこの辺りでは、どうしても目立つものは目立つ。
 世界を救ったヒーローロボット、ロックマンによって打ち倒されたはずの、「悪のロボット」が市井に紛れているなどと、知られては面倒だ。ドクターワイリーの野望の妨げになるどころか、それだけで国際警察が飛んでくるともしれない。
「そんな目立つナリして、んなノリで、ほんと平気なの」
 揶揄を返すように嗤ったフラッシュマンに、エアーマンは僅かに目を細めて見せる。
「ま、バレたら撤退すりゃいい」
「簡単に言ってくれんじゃねえの」
 けろりと返された一言に肩を竦め、フラッシュマンはエアーマンから視線を外して周囲を見渡した。一般機に偽装させたジョーたちが、トラックから地下倉庫へ荷物を運び込むのを暫く眺めていたが、中の様子を見てくる、と階段を降りていった。
「引っ越しかい」
 フラッシュマンと入れ違いに、通りを歩いていた中年の男が、好奇心を押し隠した様子で声をかけてきた。何となく気配を感じていたエアーマンは、体ごと振り返ると、礼儀正しく返事をした。
「こんにちは。ご近所の方ですかな」
 男は自分で話しかけておきながら、返事が返ってきたことに、どうやら驚いているようだった。
 男の狼狽を黙殺し――なにしろ自分は一般的なロボットなのだ――エアーマンはゆっくりと言葉を続けた。愛想を振りまこうにも、生憎と器用な表情変化はつけられないのだが、そこはそれ。
「私どもは本日、こちらへ越して参りました。アイラー商会のものです。どうぞよろしく」
「……あんたらだけかい?」
 胡散臭そうに、大きなロボットを見上げた男へ、まさか、青い巨体は生真面目そうに返す。
「入居準備に主人の手は患わせられません。主人は後から参りますよ」
 元々時間には大らかな方なので、と言えば、納得したのか、男は少し警戒心を解いたようだった。
「まあそりゃあそうか。で、ここは何屋になんだ」
 男の言葉にエアーマンは目を細め、傍のジョーを呼んで一枚のチラシを渡させた。恭しく渡した紙を男は受け取り、首を傾げる。
「ジャンクショップ、てのは、つまり、……なんだい?」
「主にロボットのリサイクル商品などを扱っております。……しかしまあ、オートバイの分解から冷蔵庫の組立、家庭用アシスタントロボットの仲介まで、なんでもお申し付けください」
「電気屋みたいなもんか」
「……まあそんなところです。近いうちに店を開けさせて頂きますので、どうぞごひいきに」

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2011/08/21 小説 Trackback(0) Comment(0)

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