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2024/04/24

店番の日々 2

【注意】
 ・特殊捏造設定があります
 ・オリロボ的な描写があります
 ・複数のシリーズが混入されています
 ・装甲レスが含まれます

夏コミにて委託して頂いた、同名無料配布本「店番の日々」より
既刊「WORLD CURTAIN」のマジック捏造設定に基づいており、且つネタバレを含んでおります。

微妙に加筆修正しました。




 壁に掛かったアナログ時計の秒針が、細長い体を滑らせて頂点と重なった。
 時刻は、夜の九時を差している。ちょうど、と言うには協定世界時と照らし合わせて些かの誤差がある。が、短くもない店番生活で覚えた、ごく人間的な物言いをするならば、「ちょうど、九時」だった。
 針が動いたのを確認してから、アイラー商会の店番はカウンターから出て、通りに面したドアへ向かった。巨体にしては滑らかな歩きで、ショウウィンドウにカーテンを引き、木製の枠に強化ガラスを嵌めた見通しの良いドアにもカーテンを引く。
 店は九時過ぎには閉めることにした。
 この辺りの人間は夜が早く、九時前にはどこも店じまいになる。夜通し営業をしているのは酒場ぐらいのもので、それとて、日付をまたぐ前にお開きとなることも、珍しくはないようだった。
 都会ならいざしらず、この界隈で夜中まで営業していたところで、客など望めまい。
 そうは言っても、純粋に商売を目的とするなら、こんな路地裏の分かりにくい場所に、わざわざ店を構えたりはしない。
 いつも留守がちの主人が営むに相応しい店ならば、どういうものでも構わなかった。ジャンクショップでも、花屋でも、些程繁盛せず、そこそこ人が入るくらいの。
 この店自体は、周囲の状況を探るための一時的なねぐらであり、足がかり用の物件が欲しかっただけで、商売が目的で開いたわけではなかった。
 大所帯のワイリーナンバーズの食い扶持と、ドクターワイリーの研究費を稼ぐため、というのが最初の目的だった。それが方々に手を広げていった結果、エアーマンが乗っ取ったり掠め取ったり立ち上げたりした会社は徐々に数と種類を増やし、現在そのすべてを把握しているのはエアーマン以外ではバブルマンとフラッシュマンくらいだろう。
 ロボット用のサプライメーカーや副資材関連、豆電球やら鋳物やらの工場、果ては水源権利だの土地転がしだの、業種も規模もまちまちだが、現在はある程度放っておいても問題なく回る体制が作られている。

 最初に、ドクターワイリーの拠点を離れて出稼ぎに回ったのは、空中基地が崩壊してからだった。
 かつてエアーマンたちが基地を持っていた島は、今は瓦礫の山になっている。闘争後数年経った今も、適当な調査が二度ほど行われただけで、基地の残骸はそのまま残っていた。
 調査隊は、ウッドマンの森とバブルマンの入り組んだ水路の一部が残る以外は、めぼしいものは何もない、と報告したようだ。クラッシュマン基地の塔が傾いて立っているだけで、残りは全て崩壊した、と。そのとき、メタルマンを始め「ワイリーナンバーズらしき残骸も確認」された、と公には発表になっているのだから、エアーマンたちは既に居ない事になって久しい。DWNは、「ロボットの幽霊」となったのだ。
 実際には今もDWNは八機が一体も欠けることなく、島の地下には兄弟機達が各々活動している。クイックマンとヒートマンの基地に至っては、殆ど未踏地だったと言うから、どれだけ緻密な調査が行われたのかは想像に難くない。
 その基地に、もう長いこと、エアーマンは数えるほどしか戻っていなかった。
 己の空中基地を失ってからは、しばらくスネークマン基地の高層部の一区画を勝手に間借りしていた。しかしながら、そこも破壊されてしまった。
 島の地下に戻って一週間もすると気が滅入った。
 閉塞感に堪りかねて、金策に出てくる、そう言うともっと目立たない奴に行かせろというメタルマンと衝突したのは一度や二度ではない。
「閉所恐怖症なのかも知れん」
 だからお外に出たいんです、既に外出支度を調えてメタルマンに言うと、「お前の神経がそんな繊細なわけがあるか」、あんまりな言葉で一刀両断された。そんなメタルマンがメンタルケアも行う、ナンバーズのリペア事情については今更ながらに絶望を覚えた。
 かくして打ち鳴らされたゴングに、長兄と次兄は久々に兄弟喧嘩――殴り合いにしろ口汚く罵り合う姿にしろ――を始めたのだが、たまたま居合わせたというマグネットマンとタップマンは心底コアの潰れる思いをしたのだという。
 事態の収拾を果敢にも試みたらしいマグネットマンが、何故廊下の壁にめり込んでいたのか、メタルマンもエアーマンも覚えがない。その後、妙に礼儀正しくされるほどの心の距離を置かれてしまった。
 それはともかく、エアーマンは改めて自分の言葉を吟味する。閉所恐怖症なのかも知れない。
 怖いわけではない。「恐怖症」ではあるまい、が、エネルギーの循環が滞ったような、いきがつまるような不快感と、コアチャンバーのネジが浮いているような、居心地の悪さにつきまとわれるのは事実だった。

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2011/08/21 小説 Comment(0)

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